日本の新体操界のニューヒロインは、若干17歳の野田市出身の大岩千未来さん。東京オリンピック出場へ向けハードな練習の毎日だ。江東区に新設の有明体操競技場で行われるオリンピックの新体操。フェアリージャパン(日本代表)の一員となった大岩選手の演技が楽しみだ。(この記事は2019年9月に掲載されたものです)
新体操の本場ロシアに練習、生活拠点を置く
東京都北区にある国立スポーツ科学センターの新体操練習場。静かに流れる音楽に合わせて優雅にリボンを操る大岩千未来選手。彼女は、2020東京オリンピックの新体操日本代表の有力選手として、今月下旬にアゼルバイジャンで行われる世界大会へ向け練習に励んでいる。
大岩選手が新体操を始めたのは5歳の頃。野田市の清水公園体育館で新体操の華麗な演技を目の当たりにしたことがきっかけだった。
川間小学校に通っていた頃は、地元の飛行船新体操クラブに所属していた。小5の時にフェアリージャパンPOLAの演技を見て「一人一人の動きが綺麗で、息の合った演技に釘付けになりました。私もああいうお姉さんたちのようになりたい」と強く思った。
中学生になり名門イオン新体操クラブへ通うようになるとメキメキと上達し中3の頃に全日本ジュニアで優勝、高1で全国高校大会優勝を飾る。本格的に新体操に打ち込むために高2から練習拠点をロシアへ移し、ロシア人コーチのもと、新体操中心の生活を送っている。
練習は、曲をかけながらの演技が中心だが、一日一回のバレエレッスンも行う。ロシアでは、ボリショイバレエを観たり美術館へ行ったり美に触れる機会を増やし感性を磨いている。
柔軟性が強み 200度以上の開脚
大岩選手の一番の強みは、驚異の柔軟性。股関節の開脚は、200度以上。「爪先美人」と称されるように爪先の柔軟性も特筆で、演技を美しく見せるだけでなく足先が安定しているので美しい回転(ピボット)が可能だ。
新体操は、ひとりの選手がリボン、ボール、フープ、クラブの4種で演技を競う。大岩選手の得意分野は、2本のクラブを使った種目。ルールは、1分30秒という短い時間に集中して演技する過程で、技の難易度で加点され逆に失敗すると減点となる。
「演技前は、不安になりがちな自分の脳をだまして、私はできる!と思い込みます。そういう強い気持ちが大事だと思っています」。華麗で繊細なガラスのような容姿から、力強い言葉が返ってきた。
高校から親元を離れ、言葉も通じなかったロシアで逞しく練習に集中している大岩選手。3ヶ月に一度日本へ里帰りする時、ホっとするのが野田市民に愛されているコミュニティバス「まめバス」を見かける時。祖母と一緒にまめバスに乗って出かけていたことがいい思い出だ。
同じ美の表現者として好きなアスリートは、フィギュアスケート選手の本田真凜選手。同世代ということもあり、彼女の笑顔と明るさ、そしてメイクも憧れの存在。演技で人々を魅了するという点で参考になることが多いと言う。
まだ幼さを残す妖精は、晴れの舞台オリンピックで私たちに素敵な魔法をかけてくれるかもしれない。
(文=高井さつき/写真=高井信成)