伝統の美しさが伝わる 東京手描友禅

なにつくってるの?東葛工場拝見

 繊細なタッチにカラフルな色調を配した図柄。反物に一筆一筆丹念に描かれていく東京友禅。

 松戸市に工房を構える篠原清治さんは、この道58年の東京手描友禅の伝統工芸士。実家は、川崎市。父が着物の生地全体を染色していく引き染めの職人だったこともあり、篠原さんは幼いころから友禅に慣れ親しんできた。実家は、同じく引き染めをしていた兄が継いだ。篠原さんは、神田の模様師・中林弘幸氏のもとで更に修業を積み、結婚と同時に独立し妻の出身地・松戸で工房を開設した。

新作をつくる伝統工芸士篠原さん

 東京友禅は、京友禅、加賀友禅と並び日本三大友禅と言われている。東京友禅は、江戸時代、京都の画工である宮崎友禅斎が発案した染法。その手法は、京、加賀と同じだが、江戸の気風を反映した粋・渋さ・洒脱な雰囲気が特色。東京手描友禅の魅力は、国内のみならず海外でも評価が高い。

 篠原さんは、今年開催された東京オリンピック・パラリンピックを記念して、参加国を描いた着物の制作「KIMONOプロジェクト」に参加。カリブ海に浮かぶ島バルバトスの自然や名所を着物に描いた。

 近年は成人式で着物を着る若者が増えているが、レンタル着物がほとんどでなかなか着物の売れ行きは上がらない。型で大量に染めたり、手描きのみならずプリントした物まで友禅と呼んでいる時代。しかし、篠原さんの作風に惹かれている固定客や呉服店の紹介で訪ねて来る客も多く、そのほとんどはオーダーメイド。現在、製作中の着物は浅草の芸者さん用の着物。依頼主は、希望の柄の打ち合わせで松戸の工房まで足を運ぶ。

 篠原さんの休日は、好きなスケッチをしたりソフトテニスで気分転換。「世の中は、ITの時代ですが、日本の伝統を守る着物の良さをぜひ知ってほしいです」と語ってくれた。

(取材・文=高井さつき/撮影=高井信成)


友禅工房 伝統工芸士・篠原清治

松戸市上本郷4222-1 047・364・9769