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どなる指導者は退場して

子どもの広場 ゆうび

 詠くん(中1)。幼いころから野球が大好き。大谷選手のインタビュー記事を読んで、自分なりに研究してバッティング練習に励んだり、お父さんとキャッチボールをしてたのしんだりしていた。

 中学で野球部に入部した。監督は県大会で部を優勝に導いたこともある男性。生徒がミスをすると罵声を浴びせ、練習場の脇に立たせたり草むしりを延々とさせる。プレーのことを叱るのではなく、生徒の人格を否定するような言葉で怒鳴り散らす。「ふざけんなよ」、「頭悪いのか」、「お前のせいで全体の雰囲気が悪くなるだろうが」など。応援席の保護者にも「私は厳しいです。でも必ずいい成績を残せます」と豪語する。詠くんのお母さんは、毎日罵声を浴びてみるみる元気をなくしていく詠くんに「部活お休みしたら」と声をかける。詠くんは「野球が好きだからやめたくはない」と言うが、家でイライラすることも多くなり勉強の成績も落ちてきている。野球のみならず、あらゆることに自信が持てない状態になっている。


 学校の生活指導で生徒を廊下に立たせたり、怒鳴るような先生はこのところ減りました。しかし、部活や少年団など、スポーツの分野では怒鳴る、立たせるなどの懲罰的指導がまだ当たり前にある状況です。指導者の中には、『選手は厳しくしないと育たない、厳しくしても勝ちさえすれば問題ない』という古い考えのもと、威圧的な言動、態度が染みついている人がいるようです。大人は仕事で罵声を浴びせる、罰を与えるようなことがあれば、もう立派なパワハラです。なぜ子どものスポーツ分野では許されるのでしょう。特に人格や価値観の形成に関わる大事な子ども時代に、懲罰的指導を受け続けることの影響は計り知れません。自己肯定感がなくなり自分の価値を低いと感じる。もしくは自分より弱い相手を見つけていじめる、人の価値に優劣をつけるなど、他者にも向きます。勝利を目指してスポーツに没頭することは否定しません。でも選手としての生活が終わっても人生は続きます。その時に金メダルを持っていても、健全な心がなければ、幸せと言えるでしょうか。


☎04・7146・3501 NPOゆうび小さな学園 杉山麻理江