赤とんぼをじっくり見てみよう!

わぴちゃんさんぽ

 田んぼの稲刈りが終わると、散歩道の風景ががらりと変わります。

この劇的な変化は、まさに夏から秋へのバトンタッチの瞬間。行く夏を惜しんで、ちょっぴり淋しい気持ちになりつつも、同時に本格的な秋を感じて、これから出会うであろう秋の自然への思いを馳せるヒトトキでもあります。

さて今回は「赤とんぼ」をピックアップしてみたいと思います。

アキアカネ

 赤とんぼは、分類上特定の種類を指す名前ではなく、体色が赤いトンボを総称した呼び名です。一般にはトンボ科アカネ属に分類される種類を指すことが多く、その代表が秋の野辺で群れを成すアキアカネです。

ただトンボ科アカネ属は国内に20種ほどもいて、東葛地区でもよく見ると何種類も見つけることができます。


 アキアカネは、初夏に田んぼで羽化した後、山間部や高原の涼しいところへ移動し、夏の間はそこで過ごします。秋になるといっせいに平地に降りてきて、田んぼの周りを群れ飛ぶようになります。私の観察では、秋の個体は9月20日~30日頃に初見となることが多いため、この記事がお手元に届く頃には、もう飛んでいるかもしれませんね。

ナツアカネ


 そしてアキアカネによく似ているのがナツアカネという赤とんぼ。ナツアカネも初夏に羽化しますが、アキアカネとはちがい山へは移動せず、ずっと平地にとどまっています。そのため夏のうちから姿を見ることができます。

ナツアカネとアキアカネはそっくりですが、横から見たときの胸の黒い線の形がちがっています。オスは比較的判別しやすく、ナツアカネは成熟すると顔まで真っ赤になります。アキアカネのオスは顔までは赤くなりません。

ノシメトンボ

 また翅(はね)の先が黒っぽくなるノシメトンボも、散歩道ではおなじみです。赤くはないのですが、分類上はトンボ科アカネ属なので赤とんぼの一種です。名前はお腹の部分の模様が「熨斗目(のしめ)模様」に見えることから来ています。

マイコアカネ

 2015年頃までは、マイコアカネもたくさん飛んでいました。オスは顔が青白くなり、それが舞妓さんを連想させることからその名がつけられました。ところがあるときから突然パタッといなくなってしまいました。

原因は不明ですが、目に見えないような環境の変化を敏感に感じ取っているのかもしれません。

  


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。

千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。わぴちゃんホームページ