ススキみたいなのはススキじゃないかも!?

わぴちゃんさんぽ
左:ススキの全体像 右:オギの全体像

 今年は9月になってからも最高気温35℃以上の猛暑日が相次ぐ、異例の事態となっていますが、この記事が皆さんのお手元に届くころには、その暑さも落ち着いていることを祈りたいものです。

 さて秋の七草のひとつでもあるススキ。尾花(おばな)とも呼ばれ、お月見には欠かせない野草です。観賞用に栽培もされていて、葉に縦縞模様の斑が入ったシマススキや、鷹の羽根のような模様が入ったタカノハススキなど、さまざまな園芸品種があります。少数派ではありますが、公園などに植えられているのをたまに見かけます。

 ところで東葛地区で見かけるススキの仲間には、ススキとオギの2種類があります。分類上はどちらもイネ科ススキ属で、同じ仲間というだけあってよく似ています。その見分け方にはいくつかポイントがあり、最も確実なのは穂に芒(のぎ)と呼ばれる硬い毛のようなものがあるかどうかです。芒があればススキ、なければオギです。

左:ススキの穂の拡大 右:オギの穂の拡大

 また生えている環境が異なります。ススキは比較的乾燥した草原や雑木林のまわりなどに生えるのに対し、オギは水辺や河川敷など湿った場所に多く見られます。利根川や江戸川などの河川敷で一面に広がっているススキそっくりな草はそのほとんどがススキではなくオギと言っても過言ではありません。

 東葛地区では草原の減少、土の乾燥化や外来種の増加など、さまざまな理由からススキの数が減ってきています。その代わりに増えているのが、ヨーロッパ原産の外来種セイバンモロコシです。セイバンモロコシは円錐形の赤茶色っぽい穂をつけるイネ科植物で、モロコシの仲間です。高温乾燥にとても強いため、他の植物がぐったりするような炎天下でも元気いっぱいに穂を出しています。

左:パンパスグラス 右:セイバンモロコシ

 また、パンパスグラスという巨大なススキのような植物が、庭先や公園などに植えられているのも時々目にすることがあります。南アメリカ原産で、ススキと同じイネ科ではあるものの、ススキ属ではなくまったく別のグループに属する植物です。知名度は低いですが、シロガネヨシ(白銀葦)という日本名があります。


 この秋、ススキとオギのちがいを意識しながら歩いてみると、楽しい発見があるかもしれませんね。


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。

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