オシロイバナやカラスウリなど、夏は夜の花がいろいろ咲く季節です。その中に待宵草や宵待草、月見草などと呼ばれている植物があります。今回はこれらについて取り上げます。
待宵草(まつよいぐさ)はアカバナ科マツヨイグサ属に分類される植物を総称したものです。その代表種マツヨイグサは、アルゼンチン~チリの原産で、1851年に園芸植物として渡来しました。その後野生化し、かつては相当はびこったらしいのですが、今はたまに見かける程度です。早ければ5月頃から咲きはじめ、花はしぼむと赤くなります。
これと同じ仲間で、大きな花を咲かせるのがオオマツヨイグサです。北アメリカにある野生種をもとにヨーロッパで品種改良がなされ、それが明治初期に日本にもやってきました。オオマツヨイグサもマツヨイグサ同様に園芸植物として栽培され、それが野生化していきました。一昔前の植物図鑑では扱いが大きめだったので、かつては東葛地区でもはびこっていたかもしれませんが、今はほとんど見かけない存在です。
現在東葛地区で特にたくさん見られるのが、メマツヨイグサとコマツヨイグサです。どちらも北アメリカ原産で、道ばたや荒れ地、河川敷などにたくさん生えています。メマツヨイグサの茎は直立し、大人の背丈ほどになり、オオマツヨイグサに比べると小さな黄色い花を咲かせます。一方のコマツヨイグサは、茎が地面をはうようにのびることが多く、茎の先にやや薄い黄色の花を咲かせます。コマツヨイグサは花の大きさ、葉の形などに変化が多く観察してみるとおもしろいかもしれません。
なお、文学作品等に登場する宵待草(よいまちぐさ)は、おそらくマツヨイグサ属の何かと推定されますが、具体的な種類までははっきりしません。
月見草(つきみそう)は、オオマツヨイグサの別名として使われることもありますが、本来ツキミソウという別な種類を指しています。ツキミソウも同じ仲間ですが、夜に白い花を咲かせ、滅多に見かける機会のない珍しいものです。一方で昼間にピンクの花を咲かせるヒルザキツキミソウという種類は、各地で栽培・野生化しており、東葛地区でも散歩道でわりと目にする機会が多いものです。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。 千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。