秋なのにサクラ、スミレ、アジサイが!?「返り咲き」を探してみよう! 

わぴちゃんさんぽ

 いつも以上に厳しくて長かった夏の暑さもようやく落ち着き、すっかり秋本番の陽気となりました。それに合わせて秋の花も盛りを迎えています。一方で秋は、季節はずれの開花(返り咲き、または不時現象と言います)が起こりやすい時期でもあったりします。今回はこの秋の返り咲きにスポットを当ててみたいと思います。

 植物の中には、返り咲きしやすい種類と、そうでない種類があります。春の花の定番であるホトケノザやオオイヌノフグリ、ナズナなどはわりと返り咲きしやすく、秋から冬にかけて、陽だまりでよく咲いています。これらほどではないもののスミレの仲間(特にノジスミレ)も、ときどき秋の野辺で咲いているのを見かけます。

左上から、オオイヌノフグリ(2021年11月7日)、ホトケノザ(2021年11月12日)、ノジスミレ(2019年11月14日)、ナズナ(2021年11月7日)

 樹木は草花に比べると返り咲きしづらい傾向があります。しかし剪定の後や、何らかの理由で葉が傷んだり、強風で激しく揺さぶられたりすると、開花することがあります。


 公園や公共施設、庭などによく植えられているシモツケ、ユキヤナギ、ツツジの仲間は、いずれも春~初夏が主な花期ですが、比較的返り咲きしやすくて、秋にもちらほらと咲いています。

左上から、シモツケ(2022年10月14日)、ユキヤナギ(2014年12月13日)、アジサイ(2023年10月3日)、キリシマツツジ(2012年11月20日)


 ソメイヨシノの花芽は夏にできた後、葉からの開花抑制ホルモンのはたらきでいったん休眠します。冬、葉が落ちて寒さに当たると休眠から目覚め、花の開花に向けて動き始めます。この休眠から目覚めるまでの流れを「休眠打破」といい、それが無いと開花できないため返り咲きしにくい種類の筆頭といえます。ところが強風や猛暑などによって気温の高い時期に葉が傷むと、開花抑制ホルモンが届かなくなって秋に開花してしまうことがあります。今夏は厳しい暑さで葉の傷みが目立ったため、もしかしたらソメイヨシノもあちこちで返り咲きしているかもしれませんね。

ソメイヨシノの返り咲き(2020年9月28日)


 夏の猛暑が関係しているのかは不明ですが、わたしはこの秋にクリ、アジサイといった梅雨期に咲く花の返り咲きを見ています。クリやアジサイも返り咲きしにくい種類なのでかなり珍しいと言えます。


 それから返り咲きとはまた性質が異なるかもしれませんが、近年はキンモクセイが2度、3度と咲く現象を耳にする機会が増えました。


 みなさんもぜひ秋の返り咲きを探してみてくださいね。


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。

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