夏は昼夜問わず虫の鳴き声が賑やかです。昼に鳴く虫の主役は何といってもセミの仲間で、街中でも元気な鳴き声が聞こえてきます。
一方で夜になるとバッタやキリギリス、コオロギの仲間の鳴き声がメインになります。今回は夏の夜に鳴くバッタやキリギリス、コオロギの仲間を中心に取り上げます。
鳴く虫というと秋のイメージが強いかもしれませんが、じつは秋に限らず、季節ごとにさまざまな種類の虫が鳴いています。その中でも比較的早くから鳴きはじめるのが、ヤブキリとヒメギスです。どちらもキリギリスの仲間で、翅をこすり合わせてシリシリシリシリ…という音を出します。
スイッチョンの鳴き声でおなじみのウマオイは夏から秋にかけてよく鳴き、東葛地域にはハヤシノウマオイとハタケノウマオイの2種類がいます。ハヤシノウマオイは雑木林や藪などに多く「スゥイーッチョン、スゥイーッチョン」と比較的ゆったりとしたリズムで鳴きます。一方のハタケノウマオイは河川敷などにいて「スィッチョ、スィッチョ、スィッチョ…」とテンポが速く、せわしない感じを受けます。
コオロギの仲間の代表種エンマコオロギは「コロコロリー」という心地よい音色を奏でます。意外に鳴きはじめるのは早く、年によっては7月中に初鳴きを確認することもあります。
童謡でおなじみのクツワムシは、クズで覆われたような林の縁などに多く見られます。しかし近年は急速に数を減らしていて、最新版の千葉県版レッドリスト2019ではCランク(要保護生物)に選定されています。古くからガチャガチャとも呼ばれますが、どちらかというと劣化したモーターのような音色と言った方がしっくりくるかもしれません。
代わりに街中の街路樹な公園の植え込みなどで、近年かなり幅を利かせているのが、中国から来た外来昆虫のアオマツムシです。「リリリリリリリリ…」と大音量で鳴き、その様子は、蝉時雨ならぬ「アオマツムシ時雨」とでも表現したいくらいです。
他にもここに書ききれないくらいたくさんの種類の虫の音が聞こえるはずです。夏はお祭りなどで夜道を歩く機会が多いと思いますので、ぜひその帰り道にでも耳を澄まして聞いてみてくださいね。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。