春の日長を感じつつ、小さな足音を探してみよう

わぴちゃんさんぽ

 冬至を過ぎると少しずつ昼の時間が長くなり、太陽の力強さから春を感じられるようになります。これを「光の春」と呼びます。わたしの住む野田市は、夕方になるとミュージックチャイム(♪夕焼け小焼け)が流れます。その時刻は1月31日までは16時30分でしたが、2月1日からは17時に変わり、そこからも季節の移ろいを感じ取れます。
 とはいえ、まだまだコートが手放せない寒さの日が続いています。


 散歩道も枯れ野が目立ち、一見するとまだ冬の装いのようです。しかし生きものたちは、すでに春に向けて着々と動きはじめています。光の春の恩恵をいち早く受ける陽だまりでは、オオイヌノフグリやホトケノザ、ナズナなどの野花が咲き、花の種類や数は日ごとにどんどん増えていきます。


 チョウの仲間も意外に早く飛びはじめます。特に成虫で冬越しするキタテハなどは、暖かい日が数日続くと真っ先に飛びはじめます。モンシロチョウやモンキチョウ、ベニシジミなども3月上旬には飛びはじめ、早いと2月中に初見を確認することもあります。


 テントウムシの仲間で比較的早くから活動しているのがナナホシテントウ。成虫で冬越しする個体は、真冬でも暖かい日が続くと、陽だまりでちょこまか動いていたりします。


 またウメの花を見ていると、ハナアブやハエが蜜や花粉を求めてやってきている姿をよく見かけます。ハチがまだあまり活動していないこの季節、ハエは受粉の手助けをしてくれる大切な存在であったりします。


 鳥のさえずりにも注目してみましょう。ヒバリやウグイスは、早ければ2月中に、遅くとも3月中頃には初音が聞こえるようになります。シーズンで初めて鳴き声を聞いた日を初鳴日と呼び、この2種類は、かつて気象庁が、春の生物季節観測の観測対象としていたものです。3月半ばを過ぎるとツバメの第一声が聞こえる可能性があります。


 ウメやロウバイ、スイセン、菜の花など、定番の人気花に春を求めるのもありなのですが、わたしはどちらかと言うと、こういう「小さな小さな春の足音」を探すのが大好きです。


 春が待ち遠しいこの季節。ぜひ日々の暮らしの中に自分なりの「小さな春の足音」を探してみてはいかがでしょうか。


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。わぴちゃんホームページ