クリスマス飾りに登場する「ひいらぎ」、その正体は?

わぴちゃんさんぽ
ヒイラギモチの花とヒイラギモチの実

 街がクリスマスカラーであふれる12月。その飾りとしてよく使われるものの中に「ひいらぎ」があります。クリスマス飾りに使われる「ひいらぎ」は、ギザギザトゲトゲの葉っぱに赤くて丸い実がいくつもついたものですが、じつはこれ、植物分類学上のヒイラギ…つまり、本当のヒイラギとはまったく別のものです。


 本当のヒイラギはモクセイ科モクセイ属の常緑樹で、分類上はキンモクセイなどと同じ仲間です。関東以西の山林に自生するほか、庭木としてもよく栽培されています。東葛地区の雑木林内でも、野生株と思われるものをたまに見かけます。このヒイラギは12月に赤い実をつけることはありません。12月はむしろ花期で、香りのよい白い花を枝いっぱいに咲かせています。実が熟すのは初夏で、青黒い色をしています。

左:ヒイラギの花 右:ヒイラギの実


 では、クリスマス飾りの「ひいらぎ」は何者なのでしょうか。これはヨーロッパに自生するセイヨウヒイラギというモチノキ科モチノキ属の樹木です。ただセイヨウヒイラギは日本の気候にあまり合わないからか、国内ではあまり栽培されていません。


 代わりに植えられているのは同じ仲間で中国~朝鮮半島原産のヒイラギモチ(ヤバネヒイラギモチ)です。ヒイラギモチは東葛地区でもときどき見かけます。


 ヒイラギモチは葉の形が独特で亀の甲羅やムササビが飛ぶ姿のようにも見えます。4月頃にうすい黄緑色の花を咲かせた後、赤くて丸い実が秋から冬にかけて熟します。

ヒイラギモチの花とヒイラギモチの実


 セイヨウヒイラギやヒイラギモチと同じ仲間(モチノキ科モチノキ属)の樹木は、いろいろな種類が庭や公園などに植えられています。古くから庭木として利用されてきたのがモチノキ科の代表種モチノキです。


 古くは樹皮を使って「鳥もち」を作ったことから、その名前が付けられています。公園樹や街路樹としてはクロガネモチがよく使われています。近年は長い柄の先に赤い実が1個ずつぶら下がるようにつくソヨゴを見かける機会も増えてきました。

左:モチノキ 右上:クロガネモチ 右下:ソヨゴ


 クリスマスの季節に赤い実と緑の葉の組み合わせを楽しめる樹種は、モチノキ科以外にもいろいろあります。ぜひ皆さんも散歩道でクリスマスカラーの樹種(赤い実と緑の葉)をいろいろ探してみてくださいね。


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。

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