意外に早いぞ、シオカラトンボ!

わぴちゃんさんぽ

 記録的な暖冬から一転、3月はくもりや雨の日が多く、また冷え込む日もたびたびあり、比較的ゆっくりとした春の訪れになりました。ソメイヨシノの開花も、当初の予想から大幅に遅れ、わたしの家のまわりは、この原稿を書いている4月14日時点でもまだ結構咲き残っています。


 さて、この原稿が皆さんのお手元に届く頃には、もう飛びはじめているのではないかと思われるのがシオカラトンボです。シオカラトンボといえば夏のイメージが強く、実際に家のまわりにまで飛んでくるほど数が増えるのは、7月に入ってからのことが多いものです。しかし成虫の出現期は4~10月と幅広く、4月中に飛びはじめる個体も少なくありません。わたしの観察では、2023年4月17日、2022年4月22日、いずれも東葛地区のおとなり茨城県坂東市内にてシーズン初のシオカラトンボを撮影しています。

 羽化直後のシオカラトンボはオス・メスともに腹が麦わら色です。オスは成熟するにつれ次第に腹の色が水色になりますが、メスは麦わら色のままです。「むぎわらとんぼ」と呼ばれているのはシオカラトンボのメス、または若いオスです。


 ところで、このシオカラトンボよりも、さらに一足早く飛びはじめるトンボもいます。そのひとつがシオヤトンボです。シオヤトンボはシオカラトンボに似ていますが、一回り小さく、翅のつけ根がうすい茶色になっています。また成熟したオスの場合、シオカラトンボは腹の先が黒いのに対し、シオヤトンボは黒い部分はなく腹がすべて水色です。シオヤトンボの成虫出現期間は短く、4~5月が中心で、6月を過ぎるとほとんど見かけなくなります。いわば「春のトンボ」という感じですね。

どちらもシオヤトンボ

 それから、アジアイトトンボなどのイトトンボの仲間も、早ければ4月半ばごろから羽化をはじめ、水辺を飛びはじめます。

左:アジアイトトンボ   右:ホソミオツネントンボ


 また成虫で冬越しするホソミオツネントンボは、確定申告の〆切が近づく頃から、少しずつ活動しはじめ、ソメイヨシノの花が散る頃には体が青く色づき、出会いを求め盛んに飛びまわるようになります。これから大型連休もあり、外に出る機会が増えるかもしれませんね。ぜひ春のトンボを探してみてはいかがでしょうか?


わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール

気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。

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