クスリには常にリスクが潜んでいます。ということは飲むクスリが増えるとリスクも増えます。今回は肝臓へのリスクに焦点を絞ってお話します。
肝臓の働きをざっと並べると、まず、胆汁を作り消化管に排泄することで食べ物の消化を助けます。また、食べたものに含まれる脂肪からコレステロールを合成します。コレステロールは細胞を作る重要な物質です。そして、タンパク質も合成します。中でもアルブミンは血液内での物質の運搬に大きく関わります。
さらに、糖分をグリコーゲンというエネルギー源に変えたり蓄えたりすることで血糖値の維持を行っています。
このように体に必要な栄養分を作り出すだけでなく、他にも食品に含まれる窒素から発生した有害物質であるアンモニアを尿として排泄するために尿素を合成します。そして、アルコールや薬物を代謝することで水に溶けやすくし、体の外に排泄します。
この水に溶けやすくする抱合という過程の前に代謝酵素シトクロムP450による代謝の過程があるのですが、この代謝された薬物の中には毒性を示すものがあり、それが薬剤性肝炎を引き起こすこともあります。肝炎とは一言で言えば肝細胞の死です。
そこに含まれているALTという酵素が血液中に流れ出し、血液検査値が上昇することで肝機能を測ることができます。すなわち、複数のクスリ、とりわけ効果の見込みの弱いクスリを増やせば増やすほど薬剤性肝炎のリスクも増えるのです。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、悪くなり始めで自覚症状が現れることは殆どありません。定期的な健康診断を受けつつも、今皆さんが飲んでいるクスリが本当に必要な物かどうか一度薬剤師に相談してみてください。
ただ、くれぐれもご自身の判断で服用をストップしないよう重ねてお願いします。
担当薬剤師 竹田恒一
問☎047・360・3600 一般社団法人松戸市薬剤師会