昨年の流行語の一つに睡眠改善作用が謳われた乳酸菌が選ばれました。いつの時代も人々の睡眠に対する強い関心が伺えます。
さて、睡眠薬に関して人口に膾炙していると思われることに「睡眠薬を沢山飲むことは命に関わるのか」というものがあります。恐らく芥川龍之介が服毒により自決したことからくるイメージかもしれませんが、この問いに対する答えは現代であれば「NO」です。
当時、主に使われていた睡眠薬はバルビツール酸系といって催眠作用の他に呼吸を抑える作用があるものでした。この「昭和の睡眠薬」に対し、呼吸への作用を弱め、不安感を抑えることや睡眠に特化した「平成の睡眠薬」がベンゾジアゼピン系という薬たちです。これらはかつて安全な薬として受け入れられました。それでも飲み続けることで徐々に効き目が落ちてくる耐性という症状や、服用したくなる気持ちに支配される、または服用しないと眠れないという気持ちになる依存症という症状が出てくることがあります。
ベンゾジアゼピン系の薬は今でも服用している方は多いと思いますが、最近は睡眠ホルモンのメラトニンの働きを増やしたり、覚醒ホルモンのオレキシンの働きを弱める薬も出てきています。飲んでいる薬が効かなくなってきた時はいたずらに飲む量を増やすのではなく、新しい薬を少量飲む方が効果に期待できるものです。
そもそも、睡眠薬は不眠症という病気を根本から治すものではありません。あくまで、飲んだ日の晩にゆっくり眠れるようになるものです。薬の服用の一方で、不眠の原因となっている日常の環境を改善してください。
毎日の起床時刻を揃え日光を浴び、体内でメラトニンが作られるようにする。夜寝る直前までスマホなどから人工の光を浴びない。入浴で夜間に一時的に体温を上げる。これらが主な快眠対策として挙げられます。
徐々に日の出の時間が早くなってきました。春眠暁を覚えずとならない生活習慣を心がけましょう。
担当薬剤師 竹田恒一
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