矢切の渡しと寅さん記念館

地域・自然

今月の沿線さんぽは、東葛エリアから足を伸ばすスペシャル版。盛り沢山ですので一日楽しめますよ。

 スタートするのは北総線の矢切駅。私は松戸駅から市川駅行きのバスに乗りました。このルートは頻繁に運行しているので便利です。

 住宅街を歩くと矢切ねぎのノボリと無人直売所を発見。矢切はブランドねぎの産地のようです。少し進むと、野菊の墓文学碑がありました。この辺りは、私も読んで涙した小説「野菊の墓」の舞台であり、また、戦国時代には第二次国府台合戦の激戦地でもあったようです。

 江戸川の土手方面に坂を下ると、畑が広がり、視界の先にはスカイツリーもうっすらと見えます。畑を突っ切る「野菊のこみち」(野菊は咲いてなかったですが)を歩いて行くと、矢切の渡しの入り口に到着しました。発着所付近には、お兄さんがおでんやおもちゃなどを売る屋台がありました。

 矢切の渡しは昨年の台風で大きな被害を受け、年末に復活。乗船場のそばには台風の時の水位を示す小さな看板があります。ぜひ近くで立ってみてください。改めて自然災害の恐ろしさを感じました。

 渡しは人が集まり次第の出船となります。葛飾側に停泊していた船が船頭さんによる手漕ぎで渡ってきます。乗客が降りきると、船頭さんの交代のようです。何と、先ほどの屋台のお兄さんに代わりました。乗客を誘導し、代金を受け取って出発です。するとボートのモーター音が鳴り出しました。船頭のお兄さんは、戸惑うこちらの心を見透かしているかのように「松戸から葛飾はぐるっと回って案内するので、モーターで移動します」と宣言。そして案内が始まりました。お兄さんが面白すぎる!

 これはぜひ実際に聞いてほしいのでここでの紹介は控えておきます。

松戸側とは打って変わり、葛飾側は住宅が密集していて、都内だなとしみじみ感じます。皆について行くと、寅さん記念館にたどり着きました。ここは、撮影スタジオの再現やジオラマ、名場面を集めた映像コーナーなど、映画『男はつらいよ』好きにはたまらない展示が目白押しです。映画監督の山田洋次の映画人生を紹介するミュージアムやカフェも併設されています。

 私はTORAsan cafeで休憩しました。寅さんの絵がかわいいTORAチーノと一番人気というザッハトルテを注文。ケーキセットはその名も「大人の恋の思い出セット」。思わず「憎いネーミングだね!寅さん!」と心の中で叫んでしまいました(苦笑)。店内はウィーンのカフェ風で、メニュー名といい、流れている曲もどことなく懐かしい雰囲気なのは昭和を代表する映画シリーズだからでしょうか?

 充電完了し、帝釈天を目指すことに。おすすめは近代和風建築の「山本亭」経由のルートです。書院庭園がとても美しく、米国の日本庭園専門誌によるランキングで16年に第3位に選ばれています。

 山本邸から帝釈天はあっと言う間。帝釈天でおみくじを引いたら大吉が!嬉しい気分で参道をそぞろ歩きしたのは言うまでもありません(笑)

(写真・文=土肥佳子)

◎歩行距離:約3・4㌔

■矢切の渡し☎047・363・9357

▽中学生以上200円/4歳〜小学生100円

運行:10時〜16時12月〜3月上旬:土・日・祝日のみ3月中旬〜11月:毎日※天気や水位の状況により運休あり

■寅さん記念館▽東京都葛飾区柴又6‐22‐19☎03・3657・3455入場料:一般500円 小中学生300円 65歳以上400円

開館:9時~17時休館日:第3火(祝日・休日の場合は、直後の平日)12月の第3火・水・木(年末年始は開館)

■山本亭▽東京都葛飾区柴又7‐19-32

☎03・3657・8577

開館時間および休館日:寅さん記念館を参照入館料:100円(中学生以下無料)