下から2番目と上から2番目 

レイソルコラム

 2023年12月9日―。 柏レイソルの歴史に新しい記憶が書き加えられた。


 「天皇杯JFA第103回全日本サッカー選手権大会・準優勝」


 120分を超えた戦いの末、10年ぶりのタイトル獲得とはならなかったが、全ての選手と全てのクラブスタッフへの敬意と大きな感謝を抱きながら、この稿を書いている。


 どうやら、あの日以来、目の奥が熱い。涙腺の調子がおかしいようだ。それもそうだ。柏レイソルは本当に苦しかった2023シーズンを過ごしたのだから。


 振り返れば、5月18日。井原正巳監督と布部陽功GMは報道陣の前で「柏レイソルの軌道修正」を語る中でこう誓った。


 「アグレッシブで組織的なサッカーを」


 時間は掛かったが、12月の国立競技場で試合を支配した魅力的なチームはどちらのチームか、どうかみなさんに再検証していただきたい。


 私がここで「J1残留」に触れないのは文字数の関係と「降格するわけがない」とクラブに寄り添ってきたからだ。


 5月に誓われた約束は果たされた。レギュレーションに助けられた?だからなんだ?それの何が悪いのか?ただ、持ち帰ったトロフィーは少しこじんまりとしたものだったことは悔いとして残っている。 このコラムで展開してきたように、私は今季の柏レイソルを本当に気に入っている。


 私たちのキャプテンである古賀太陽はその美しい名前の通り、クラブの未来を明るく照らす存在になりつつある。彼が発する気持ちは常に暖かい。私たちの自慢であり、偉大な選手だ。


 エース・細谷真大はまさに日本を代表する選手になろうとしている。ある相手選手は「あんなFWは見たことがない」と細谷と対峙した際に痛めた箇所をさすりながら驚いていた。


 私たちの「10番」であり、リーグ屈指の「10番」であるマテウス・サヴィオは柏レイソルというクラブとこの柏の街を心から愛してくれている。


 たいへん大きな期待と共に加入した高嶺朋樹と山田康太にはどんな時にあっても揺るがない「自らへの自信」と「その自信を一度傍に置ける強さ」の素晴らしさを学ばせてもらった。


 戸嶋祥郎は一度俯瞰して全体を見つめて、最適な発信を続けてくれている。ピッチでも素敵な人だが、イベントを準備する後ろ姿も本当に素敵だ。

 椎橋慧也からは「ブレない強さ」を、犬飼智也や片山瑛一、小屋松知哉、仙頭啓矢からは「プロフェッショナルとはなんたるか」を、ドウグラスやジエゴからは「サッカー王国の奥深さ」を、山田雄士と田中隼人、土屋巧からは「未来は常に美しい宝である」ことを学ばせてもらった。


 「三丸拡式施術」で回復した痛みもあった。


 踵を踏み鳴らし、「誰かを推していた」松本健太は今や多くの人たちから尊敬され、たくさんの人から推されている。 天皇杯得点王の真家英嵩はきっと今ベッドで膝を見つめながら、その向こうに映る次の自分の姿を想像しているはずだ。私は待つつもりはない。彼はさらに強くなった両足で私たちの前に帰ってくるからだ。


 「レイソルが大好きになった」と公言してはばからない立田悠悟に至っては「あの日」の「あの試合」の最後の最後まで、「絶対におまえにタイトルを獲らせてやる!」、「勝って、おまえを泣かせる!」、「オレたちならできる!」と親友に向かって叫んでいた。もう、世界線が漫画である。決して彼をくさしているわけではない、憧れている。だが、「大好き」なのは私たちの方だ。君をね。


 もう書ききれないほど感情を抱いた2023シーズン。主だった戦績となると、「『下から2番目』と『上から2番目』」となるのだが、私はこのチームと出会えて幸せだったと心から言える。 そして、どんな時も逞しくも明るく楽しいムードで彼らを支えたサポーター。彼らとは少し異なるスタンスで彼らを見つめたサポーター。あなたがたが表現してくれた国立競技場の美しい光景は墓まで持っていく。そのつもりだ。


 2023シーズン最後のコラムもまた予定文字数オーバーだ。そんな魅力を持つクラブなんてそんなに多くない。また会いましょう。


(写真・文=神宮克典)