印西市にある小林牧場入口の桜並木の道へ入り、左側の細い道の先の森の中にトレーラーハウスが見えてくる。今年2月、この場所に移転したばかりのフリースクール「ぴおねろの森」だ。スペイン語で「開拓者」の意。
「ぴおねろの森は大人も子どもも平等。笑ったり、泣いたり、時には怒ったり。ありのままの姿で子どもたちと一緒に過ごしたい」と語るのは一般社団法人「ぴおねろの森」代表理事の大河原亜矢子さん。
設立のきっかけは息子の不登校だった。突然のことで動揺し、これからどうなってしまうんだろうと、孤立感と将来の不安が募った。閉じこもるわが子と過ごす毎日を変えてくれたのが、同じように苦しむ子どもや親との交流だった。不登校を理解するために調べていくと、多様な学び方をしている子どもたちや、それを支え共に生きる大人たちに出会い、勇気をもらった。
2019年、フリースクール全国ネットワークのスタッフ養成講座を受講し、2020年6月、印西市の市民活動として、学校以外で学ぶ子どもたちの居場所「ぴおねろの森」を立ち上げる。代表の個人宅で活動を始めたが、登録者は70人近くになり、大人数や音が苦手な子どもたちは行き場を無くし、住宅街ならではの騒音問題も抱えた。
すべての子どもの等しく教育を受ける権利を保障し、より安心して通える居場所を目指すために現在の場所へと移転した。学校が苦しい子どもたちが、まず休み、そして彼らに安心できる居場所と温かいご飯を提供することで、子どもたちが人との繋がりを実感し、孤立感を持たなくなることを最優先に取り組んだ。
「遊びや生活、様々な体験活動を通して、生きる喜びを見出せるようにしたい。地域のまちの先生による不登校の子どもたちの教育確保にも力を入れてきた」。
親に対しては、不安に寄り添い、親の会や勉強会を開催、電話相談の他、登録に至らない親に対しても伴走支援を行い、孤立感を防ぐ取り組みも実施している。
子どもたちの心の森へ分け入った大河原さん。その活動の尊さを深く理解する中で、悩みはいつしか強みと変わり、不登校を取り巻く現状を変えて行く覚悟は揺るぎない。
活動はまだ始まったばかり。「森の中で自然からの恩恵を全身で受け、好奇心を入口にした学びを」と発想は広がる。
「これまで、スタッフをはじめ、ボランティアの皆さんに十分な人件費をお支払い出来ない中で、5年間も継続出来たことは奇跡」と感謝の念も忘れていない。
●次回は稲村萌(いなむらめぐみ)さんにバトンを渡します。