大自然に学ぶ ネイティブ・アメリカンの教え 『リトル・トリー』

K太せんせいの「放課後の黒板消し」

フォレスト・カーター著『リトル・トリー(The Education of Little Tree)』は、美しい自然のなか、チェロキー族の祖父母の愛情に包まれて「ネイティブ・アメリカンの生き方」を学んでゆく少年リトル・トリーの物語です。

 「モ・ノ・ラー、母なる大地の感触がモカシン(平底の柔らかな革靴)をとおしてぼくの足裏から伝わってきた。土の凹凸やなめらかな感触、血管のように大地の体内を這いまわる木の根、さらに深いところを流れる細い水脈の生命さえも。大地は暖かく弾力があり、ぼくはその厚い胸の上をピョンピョン跳ねているのだった。すべてが祖母の話していたとおりだ」。

 この一文から、私たちが自然の中で生かされていること、またその自然がこんなにも生命力にあふれているということが伝わってきます。そして何より、これらのことが代々子どもや孫へと伝え続けてこられたこともわかる一節です。

 またある日のリトル・トリーは、祖父と共に山に入り、山七面鳥をつかまえようと「わな」をしかけました。山七面鳥の通り道に大きな落とし穴を作って、コーンをまいておびき寄せるのです。

その仕掛けを終え朝食を取った頃、彼の目には次のような大自然が映っていました。

「太陽の光は山頂にぶつかってはじけ、大気中にまばゆい光の矢をシャワーのように射放っている。氷をまとった木々はキラキラと輝き…(中略)…今山は身じろぎをし、ため息をついている。…(中略)…『山は生き返った』目を山に向けたまま、祖父が低くつぶやいた」。

なお、リトル・トリーは著者が祖父から授けられた「ネイティブ・アメリカンネーム」。つまりこの物語は、実際にチェロキーの血を受け継いだ筆者が紡いだ物語だったのです。文章の随所に自然やその中で生きることへの「敬意」と「誇り」を感じるのは、そのせいかもしれません。

皆さんもこの夏、大自然の鼓動を感じに出かけてみませんか。

■K太せんせい現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内などを執筆する。