今回は、口コミで徐々にファンを増やし、15年の時を経た今もなお日本中で愛されているマレーシア映画をご紹介します。2009年にマレーシアで公開された『タレンタイム~優しい歌』は、日本では映画祭上映後、自主上映会を重ねてきました。そして2017年、ついに全国公開され、その後もアンコール上映が続けられてきました。
タイトルにもなっている「タレンタイム」は、マレーシア英語で“学生の芸能コンテスト”を意味します。本作では、マレー系、インド系、中国系などの高校生たちが、民族や宗教の違いによる葛藤を抱えながらも、タレンタイムに挑む姿が描かれます。
本作を手がけたのは、女性監督ヤスミン・アフマド。彼女は本作を完成させてまもなく、この世を去りました。しかし、さまざまな人々が混在する世界をそのまま肯定する彼女のまなざしは、いつの時代でも決して色褪せることはありません。だからこそ愛され続けてきた本作ですが、日本での上映権は残念ながら今年9月で終了。
今回の上映が、スクリーンで観られる最後の機会になるかもしれません。
ぜひ当館のスクリーンで、この感動を目に焼き付けてください。
(キネマ旬報シアター 長谷部)