今回、紹介する映画は、パレスチナとイスラエル、立場を超えて手を取り合うふたりの若きジャーナリストによる決死の活動を2023年10月までの4年間に渡り記録したドキュメンタリー。
ヨルダン川西岸地区で生まれ育ったパレスチナ人の青年バーセルは、イスラエル軍の占領が進み、破壊されていく故郷を幼い頃からカメラに記録し、世界に発信していた。そんな彼のもとにイスラエル人ジャーナリスト、ユヴァルが訪れる。非人道的で暴力的な自国政府の行いに心を痛めていた彼は、バーセルの活動に協力しようと、危険を冒してやってきたのだった。行動を共にし、互いの境遇や気持ちを語り合ううちに、2人の間には思いがけず友情が芽生えていく。
しかしその間にも、軍の破壊行為は過激さを増し、彼らがカメラに収める映像にも、徐々に痛ましい犠牲者の姿が増えていく。
本作に見るパレスチナの日常はあまりに凄絶ながら、記録されているのは、かつてない規模の虐殺が行われることとなった2023年10月以前の状況だ。
知ることだけでは、現実は大きく変わらない、しかし、そのことは知らずにいることを決して正当化しないだろう。ぜひ本作を観て、知り、考えるきっかけにしていただきたい。
(キネマ旬報シアター 鈴木結太)