イベリア半島の片隅で―小久保玲央ブライアン

レイソルコラム

遠くイベリア半島の片隅で牙を研ぐGKがいる。ポルトガルリーグの古豪ベンフィカ・リスボンに所属する小久保玲央ブライアン選手だ。


 柏市立名戸ヶ谷小学校出身。元々は恵まれたフィジカルを活かした快速FWだったが、その光る素質を買われ、育成組織・柏レイソルアカデミー入団を果たす。ここで最初の「転機」が訪れた。コーチの勧めにより小久保選手はGKに転身。アカデミーで一からGKの所作を学んだ。


 「セレクションにはFWとして参加していたので、そのまま入団していたら今のような状況にはなっていなかったはずです」
 時には仲間たちからも叱責を受けた。最初はボールを胸でキャッチすることすらままならなかったが、シュートへの反応やPKストップのセンスが抜きん出ていた。


 次の転機は柏U‐15時代。チームメイトの体調不良により巡ってきた出場機会で好守を連発し、勝利とチームの信頼を掴んだ。


 更なる転機はU‐18時代にやってきた。小久保選手はカタールで開催された「アルカス・カップ」で大活躍。現所属チーム・ベンフィカのスカウトの目に留まり、獲得オファーが舞い込んだ。ベンフィカは欧州トップレベルのGKを多数輩出してきた歴史を持つクラブ。そのベンフィカが小久保選手を選んだことになる。


 「最初に『ポテンシャルを評価している。ベンフィカに来ないか?』と言われたように記憶しています。最初はGKからパスを繋ぐスタイルのベンフィカのサッカーに適応できない上にポルトガル語が難しく、なかなかフィットできませんでした」


 日本への郷愁も手伝って苦労はしたが、持ち前の明るさでチームに溶け込んだ。アニメの話、お寿司や日本食の話、なんでも話題に乗っかってチームの輪に加わった。どんな苦労もユニフォームに袖を通せば忘れられた。
 現在はプロ予備軍の精鋭たちが集うU‐23チームで戦いながら、GKという仕事やサッカーという競技への純粋な愛情、1人の人間としての感覚を高めている。


 「2歳下には2m越えのGKがいたりと常に刺激的で、素直に『誰にも負けたくない』って思えるようになりましたね。こんな気持ちは初めてですし、この環境にいさせてもらえて幸せですし、絶対にトップチームのゴールを守るつもりです」
 現在の充実があるのは柏レイソルがあるから。その感謝の気持ちが小久保選手のモチベーションともなっている。
 「あんなヘタっぴGKだったのに、柏レイソルで育ててもらえたから、今の自分があることを忘れたことはありませんし、ベンフィカへ来て大きな夢ができたことが自分を変えたと思います。たくさんの方々に恩返ししていくことも自分の夢の1つなんです」


 まだまだ20歳。乗り越えなければならない壁はたくさんあるが、次に転機が訪れるとすればそれはサッカー人生を左右するものになるはずだ。小久保選手は貪欲に未来の計画を話してくれた。


 「GKはキャリア的に息の長いポジションですから、まだまだ努力や挑戦を続けていきたいし、もっと良いGKになりたいです。そして、いつか日本に帰ってプレーしたいですね。日立台で?いいですよね!」


 ベンフィカはこの程小久保選手との契約更新を発表。契約年数がまだ残っている中での更新であり、チームからの期待をうかがわせる。小久保選手の挑戦はまだまだ続く。
(写真・文=神宮克典)

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