ふたつの「たろう」レストラン「TARO」「太郎飯店」

グルメ

「TARO」「太郎飯店」 白井正太郎&良太郎 兄弟

船橋市 習志野市

 

「TARO」船橋市 オーナーシェフ 兄/白井正太郎さん

「アレルギーは?お祝いであれば、シャンパンのご用意も出来ますよ」問い合わせの電話に明るい声で気さくに対応するのは船橋市前原の「TARO」のオーナーシェフ白井正太郎さん(33)。
母親によると、物心付いた時から食べる事が好きで手先が器用だったとか。小中高と文集に「料理人になりたい」と書いた。高校は調理国際科へ、その後も料理専門学校に進学、フランスへ留学。

フランスでは最初は言葉も通じない。露骨な人種差別もあり、濡れ衣を着せられても言い返す事も出来なかった。後にフレンチの名門「ポール・ボキューズ」へ。一日中ジャガイモの皮剥きだけのポジションから料理の味を左右する重要なポジション「ソーシエ」に抜擢。文字通り、鍋が飛んでくるような厳しい現場でさぞきつかったのではと思うが「楽しくて仕方がなかったです」と笑う。

オーナーシェフの白井正太郎さん

正太郎さんが得意とするのはいわゆる「重たいフレンチ」。ヌーベルキュイジーヌではなく、オートキュイジーヌと呼ばれる濃いソースが特徴的な王道のフレンチだ。

活躍の場を日本に戻してからも丸の内の「レストラン Monnna Lisa(モナリサ)」など都内の名店を歴任。地元津田沼の「Lassiette M(ラシェット エム)」で料理長を9年間勤めた後に、昨年7月に「TARO」をOPENさせた。

天草A5黒毛和テールのパータフィーロ

「自分は人の3倍いろんな経験を積んでいると思う」と胸を張れる人はそうそういない。幼少期から料理人一筋でブレずに歩んできた。1日16時間は料理をしていた。やっと取れた休みの日も日本各地へ泊まり込みで野菜農家さんに会いに行ったり、自分に無い知識やスキルを身につけるべく貪欲に学びの場へ。そこで得た人脈や知識などが経験値を上げる事となり、後々大きく自分を助けてくれた、と語ります。

マンゴーとパッションフルーツのタルト

「いつか弟とコラボ企画がやれたらいいな」と、弟の話をする時は優しい顔になる。意見が違っても「6歳も違えばしょうがないか」と思えるんだそう。「運が良く、人に愛されるように育ててもらえた」と語る兄は、弟にも惜しみない愛を注ぐ。兄弟二人とも「料理が好き、人が好き」。人懐こい笑顔が印象に残った
▽「TARO」☏047・456・8684(船橋市前原西3-5-15)。

店主とさし向かいで料理と会話が楽しめる

「太郎飯店」習志野市 オーナーシェフ 弟/白井良太郎さん

赤い壁が台湾情緒を演出

2024年の年頭、ポストに舞い込んだ一枚のチラシ。そこには美味しそうな中華料理の写真と「2月 毎週日曜日 OPEN前 試食会 太郎飯店」の文字。どうやらこれまでテイクアウトのみで営業していた台湾点心の店が、本格的台湾料理のレストランをOPEN前の試食会を開くようだ。試食会は「屋外」との事。気になり、出掛けてみると、まるで台湾にある屋台のような、雰囲気。
「太郎飯店」店主の白井良太郎さん(28)は一昨年の春、平家造りでL字型の建物、庭には竹林と一本の大きな木のある自分の持ちたい店のイメージにぴったりの店舗を見つけた。厨房を真ん中に2つの部屋からは庭が見える独立した空間。1フロア1組しか入れない特別な店だ。

オーナーシェフ 白井良太郎さんと妻の里菜さん


良太郎さんは大学に通いながら花見川区の本格中国料理店「回頭」で修行。そこで中華料理に魅せられ、大学を中退。台湾へ留学した。語学や料理を現地で学びながら台湾のミシュラン一つ星店「金蓬莱」で日本人唯一の料理人として活躍。
「金蓬莱」は210席の規模に対して厨房はたった6、7名。休憩時間5分というのもザラで、超多忙な職場で常にポジションの奪い合いが続くなど、厳しい世界だが、その中で得たものが今を形作っている。
 「中華料理と台湾料理は似て非なるもの。一つの素材に対しても香りの出し方が違い、細やかに分けたらもはや別料理」。コロナ禍で帰国後、日本で店を持つにあたり中華料理ではなく本格的な「台湾料理」店を出すことを決意。「自分が台湾で身体に染み込ませてきた大切な台湾料理のエッセンスが薄れてしまうのは避けたい」と、あえてどこのお店にも入らず、点心の受注販売を続けながら、時期を待っていた。

お箸でほぐれるほろほろ黒酢酢豚
皮から手包みの台湾式小籠包

大学中退のおり、親の猛烈な反対に遭っている時、親子関係の絶縁寸前までいった時、兄の正太郎さんが「あいつに料理やらせてやってよ」と親を説得してくれたおかげで現在があると話す。普段は「良太郎」「兄ちゃん」と呼び合う仲の良さだ。
「自分はすべて現場で学んできたタイプ。料理人としての経験年数も違うし小さい頃から料理人を目指してきた兄には敵わない。わからないことがあれば惜しみなく教えてくれる。自分を成長させてくれる兄の存在には感謝している」と話してくれた。
▽「太郎飯店」☏080・8042・7166(習志野市実籾2-25-19)。

窓の外の竹林が清々しい特別空間