早川エジソン伝EXTRA ~Edição extra da biografia de Edison~

レイソルコラム

今シーズン途中からレイソルに加入したアンジェロッティ&ペドロ・ハウル&ドッジ&エメルソン・サントスのブラジリアン・カルテット。

新型コロナウイルスに関するプロトコルなど諸般の事情があった上での途中加入。さらにリーグは連戦の真っ只中という簡単ではないタイミング。4月24日の徳島ヴォルティス戦でアンジェロッティとペドロが、28日横浜FC戦でエメルソンとドッジがレイソルでのデビューを果たした。

渡航禁止措置や隔離生活などの難しい時期を経ているためか、デビュー直後はコンディショニングにばらつきが見られたが、状態が徐々に上がってきたところで中断期間に突入。その期間をプラスに捉え、再開後のフィットが期待される…というのが、ブラジリアン・カルテットの現在地。

このタイミングで、選手経験もあり、彼らを日常からサポートしている早川エジソン正吉通訳にブラジリアン・カルテットについて話を聞かせてもらった。

まずはドッジ。

中盤の底からあらゆる場所に顔を出し、丁寧にボールを動かすことができる。周りのコーチングをよく聞くことができ、セカンドボールの予測にも長けている印象があるミッドフィルダーだがエジソンの目にはどう映っているのだろうか。

22 MFドッジ[Douglas Moreira Fagundes “Dodi”] (25歳)

「おとなしいけど、芯がしっかりした人。静かに燃えているタイプの選手です。名門・グレミオの下部組織出身で、その後にクリシューマからフルミネンセへ進みました。俊敏で判断も早い選手でどんな時もターンで前を向いてボールを付けることができるから、テンポが速いJリーグと相性が良さそうな気がしています。加入前に映像を見た印象では前線でもっとゴールに絡む仕事をしていましたね。とても勤勉で献身的な守備も特長としてあります。今はまだ探り探りというか、ボランチとしてバランスを取りながらプレーしていますけど、ゴールやアシストが決まりだしたら本領発揮と見ていいと思います」

続いて、アンジェロッティ。

やや「コワモテ」なルックスのアンジェロッティ。5月5日には早くも初ゴールを決めた。加入当初は前線での孤軍奮闘が続いたが、中盤やサイドでボールを受け、細谷真大らとの関係から再びゴール前へ進入するなど、巧みな動きが印象的な左利きのアタッカーだ。

29 FWアンジェロッティ[Rodrigo Luiz Angelotti] (23歳)

「やんちゃなルックスでまだ若いけれど、この4人で唯一、クリスティアーノと同じく一度オーストリアでプレーした経験も持っている。テクニックも申し分ないですし、レイソルへ来て割とすぐにゴールもできた。まだJリーグのテンポやスピードに慣れる必要がある段階かもしれないですが、多彩で面白い才能を持った選手ですよ。リズムが独特で、どこかクラッシックなブラジル人レフティーの風情がある選手。前線で構えている純粋なフォワードというよりは中盤で一度ボール受けてから、様々なプレーをすることができるタイプ。実はヘディングも打点が高くて強いから、これからが楽しみですよね」

4人のポジションは前線に2人、中盤と最終ラインに1人ずつとなるがそもそものチーム内での競争に加えて、ブラジル人同士の競争が発生しているこの状況を側で見守るエジソンは彼らの様子をこう話していた。

「ルール上、外国人選手は1試合5人までプレーができる。まず、キーパーには韓国人のスンちゃん(キム・スンギュ)がいます。それぞれポジションは違うけど、7人で4人枠とスタメン自体を争う環境にあるのですが、彼らはとても健全な競争をしています。それぞれが良いプレーをすることで、とても純粋にポジションを争っています」

そして、この「リトル・ブラジル」と表現して差し支えないグループの関係性についても言及。

来日間もない彼らには心強い存在がいる。ベテランのクリスティアーノである。

「最年長のクリスがいるので、分からないことや思ったことがあれば、真っ先にクリスに相談していますね。アドバイスをもらいに。ヒシャルジソンも(マテウス・)サヴィオも日本に3年いるので、新しい環境でプレーする上で彼らの存在は大きいでしょう」

また、同世代のヒシャルジソンやサヴィオの存在も4人にとって心強いだろう。

「ヒシャもサヴィオも流暢な日本語を話せる訳ではないけど、最低限の語彙力はありますね。日本人選手たちが何を求めているとか話しているとかは理解していますから。試合中も『ミギ』とか『モウイッカイ!』、『ナンデ?』とか話していますね。特にサヴィオは来日当初からチームメイトを観察していたし、言葉や文化を積極的に吸収していましたね」

続いてはペドロ・ハウルだ。

恵まれたフィジカルを持つ彼はデビュー戦からその持ち味を発揮していた。ボールを収めて、攻撃のリズムを生み出して、高さを活かしたフィニッシュを狙っていた。特に出色の出来だった6月の湘南ベルマーレ戦や7月の鹿島アントラーズ戦は、「高さ・強さ・決定力」を持つペドロのPRムービーのようだった。

23 FWペドロ・ハウル[Pedro Raul Garay da Silva] (24歳)

「ペドロは見ての通り、長身で体の強いポストプレーヤー。スピードも非凡ですし、テクニックも高い選手。まだ今は相手を背負って、足下で受けて、ボールをさばくことが多いけど、動き方が分かってきたら、もっと活躍してくれると思います。例えば、ミカ(マイケル・オルンガ)も最初は適切な動き出しのタイミングが掴めていなかったのですが、コーチたちと練習や会話を重ねながら進化していきました。どこでタイミング良くボールを受けるべきなのかのコツを掴めさえすれば、たくさんのゴールを決める選手になるでしょう…あと、あのルックスなので、自分をC・ロナウドのような存在だと思っていそうなところも面白いですね(笑)」

そして、最後はエメルソン・サントス。

5月中旬を最後に実戦から遠ざかっている。守備に課題を抱えるレイソルにとって痛手となっているが、五輪によるリーグ中断期のトレーニングマッチでプレーしたことがクラブのSNSで確認できている。少ないプレータイムの中ではあるが寄せや競り合いでのインテンシティ(プレー強度)を見せており、ブラジル人センターバックらしいインパクトを感じさせた。

エジソンはエメルソンへの特別な敬意を必死に抑えながら、彼についてこう話してくれた。

5 DFエメルソン・サントス[Emerson Raymundo Santos] (26歳)

「空中戦が強いセンターバックですが、ボランチでもサイドバックでもプレーすることも。まだみなさんは見られていないけど、強いだけじゃなくて、柔らかいパスを出すんです。実はサヴィオが昔対戦したことがあって、『エメルソンはロングフィードが上手い選手だったよ』と話していました。そういった能力を発揮するタイミングを掴むことが今は大事なんだと思います。彼は私の心のクラブ・パルメイラスから来た選手ですが、まずはレイソルでも成功してほしいです。パルメイラスではリベルタドーレス杯準決勝リバープレート戦でエメルソンが素晴らしいヘディングでピンチを救ってくれた。南米王者の選手ですから、リスペクトをしています…でも、立場をわきまえて、今はレイソルの人間としてしっかりとサポートしたいです」

デビュー当時にプレー中の共通言語の欠如が浮上していたエメルソンだが、その改善に期待が掛かる。とても根本的なディテールではあるが、合流間もなかった5月からの歳月がポジティヴに進んでいることを願うばかりだ。彼らと日々寄り添う1人のスタッフとしてエジソンは我々にとって最もキャッチーな人物との出来事を例に出してくれた。

「でもね…思い返してみれば、ミカも最初は時間について細かく伝える必要があったし、日本の文化への適応や協調性を理解してもらわなければいけなかった。そんな場合には踏み込んだアドバイスをしたし、場合によってはミカを叱らざるを得なかった。さすがに私もその時は良い気はしないですけども、後々こういうことは日本で生活するための大事な要素なんだと理解して、しっかりと活かしてくれて自分のためになったと自覚を持ってくれればそれでいい」

来日間もない彼らには、時差に始まり、言語、日本の生活様式や気候、さらにコロナ禍など適応しなければならないものがたくさんあった。そして、サッカー選手としての戦術理解や努力、そして、貢献。様々なファクターを取捨選択するためには時間が必要だ。要するに柏レイソルの旗の下に集う我々としてできることはレイソルのために加入してくれた彼らを「信じて、待つ」ということなのだろう。エジソンの話を聞くうち、その思いに至った。

「外国人選手は日本の文化や風習を理解しないといけない部分と自らの主体性を守らなければならない部分もあるから。日本人もその違いを上手く受け入れてくれたり、可能な範囲でおおらかに見てくれたりとか、両方が上手く、いち人間としてお互いをリスペクトすることも大事だと思います」

1人の通訳者としての経験だけでなく、1人の日系ブラジル人としての人生経験からの思いにも聞こえる言葉を残し、予定時間を過ぎた取材が終わった。きっと、まだまだ記憶の引き出しは無限にあるだろう。

「未だに私も叱るよりも叱られることの方が多いけどね(笑)!まとめにくいくらい、たくさんしゃべってすいません!」

いえいえ、無事まとめてみせました!いかがですか?私はエジソンと話せて、幸せでした。

(写真協力:柏レイソル)(文=神宮克典)

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