日本大学松戸歯学部放射線学講座 専任講師 徳永 悟士先生 教授 金田 隆先生
1895年にレントゲンにより発見されたエックス線(レントゲン)は、その後の医学に多大な貢献を果たしたとされており、今日も私たちはその恩恵を受けています。
エックス線の医療への応用の多くは病気の診断に利用され、様々な領域の診断に利用されてきました。そして、1972年にコンピューターを利用したエックス線CTが発明されたことにより、医学は更なる進化を遂げたといわれています。
以来、コンピューター技術の向上により、高精細な画像の描出が可能となったことで、従来は見つけられなかった病気の検出率が向上しています。さらに、近年ではAI技術の発展により、画像診断の障害となる影(障害陰影)の除去や、画像描出精度の向上等により、ますますの医療への貢献が高まると期待されています。
細部まで観察を可能にしたCT
歯科でもCT検査の恩恵は多く、様々な分野で利用されています。また、歯科で多く利用されている歯科用CT(歯科用コーンビームCT)は、医科病院で用いられるCTと比較して線量が少なく、高分解能で細部まで観察することに優れています。
現在の日本におけるCBCT保有台数は2万3,000台を超えており、世界に類を見ない状態です。歯科用CTが主に利用される分野として、①歯内療法分野、②口腔外科分野、③インプラント分野、④矯正分野があります。
歯内療法分野は根管や根尖に生じる病変を扱う分野であり、通常のエックス線検査では検出できない根管の細部の形態や根管の走行ならびに検出困難な病巣の把握に有用です。
口腔外科分野では顎骨内に発生した疾患(主に嚢胞や腫瘍等)の3次元的な評価に有用です。その他、第三大臼歯(親知らず)の埋伏歯に対する治療計画立案や術前のリスク評価(下歯槽神経の損傷等)をする上でとても重要なものとなっています。
インプラント分野はインプラント埋入予定部位における術前評価として最も重要とされており、顎骨に走行する神経、血管の損傷や施術による偶発症(顎骨外の血管損傷等)を事前に予測、回避することが可能であり、インプラント治療の成功率の向上にも貢献しています。
矯正治療の予後予測をもとに矯正具を作成
また、近年になって利用が増えた矯正分野では、矯正治療前の術前評価により歯列のみならず歯根の形態と顎骨の位置関係を把握することで、矯正治療の予後予測や治療の難易度の把握を行う上で重 要視されており、さらにはCTデータを元に矯正用ワイヤーを作成するというデジタルワークフローの確立も今日のデジタル矯正治療の根底にあります。
以上のように、今日の歯科医療は様々な分野でCTが利用されています。今後さらなる分野でのCTの利用が予想され、患者さんへの歯科治療に活躍されることと期待しています。
■日本大学松戸歯学部付属病院☏047・360・7111(コールセンター)
☏047・368・6111(代表)
図説:
A 埋伏智歯の術前CT検査:智歯の歯根と下顎管(神経が走行する管)が接しており、術後の神経麻痺が懸念される。
B 上顎右側第二大臼歯の術前CT検査:口内法エックス線画像(B-1)では病巣は不明瞭であるが、CTでは同根尖部の病変を明瞭に観察できる。