「入れ歯のお手入れについて」

ふれあい毎日連載

日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座教授 伊藤誠康先生

伊藤誠康 先生

入れ歯をお使いの方で日常的にどのようにお手入れをされているでしょうか。部分入れ歯は、残っている歯に金属のバネでとめるタイプの入れ歯です。歯が1本も残っていない場合は総入れ歯といいます。

入れ歯の清掃方法について

入れ歯の清掃は、はじめに軟らかい歯ブラシで水洗しながらやさしく清掃をします。入れ歯専用の歯ブラシも市販されています(写真)。歯磨き用の歯磨き粉は義歯表面に傷がつくので使用しません。入れ歯の表面を過度に磨きすぎると、表面に微細な傷ができ逆に汚れが付きやすくなります。

また、清掃時に洗面台にうっかり落としてしまい入れ歯が破損することがあるため、水をはった洗面器またはタオルの上で洗うと落としても破損の心配がなくなります。

市販の入れ歯洗浄剤については、過酸化物系または酵素系の入れ歯洗浄剤が一般的のようです。先の入れ歯専用ブラシで清掃した後は、入れ歯洗浄剤にメーカー指示に従いつけおきをします。つけおき後は、軽くブラシで洗い、よく洗い流してからお口の中に入れるようにします。

残っている歯のお手入れ

部分入れ歯の場合は、入れ歯を外した後は、残っている歯も丁寧に磨きましょう。とくにバネのかかっている歯は付け根に汚れが溜まりやすくなります。通常は、就寝時は入れ歯を外し、入れ歯とお口の清掃を行った後は、夜間は水中で義歯洗浄剤につけて保管をします。入れ歯はお口の中から外しているときは乾燥させない様に容器などに入れて水中で保管をします。

入れ歯とお口のメンテナンス

入れ歯は長く使用していると、痛みがなくても、時間の経過とともに、噛む力を支えている歯ぐきが痩せてくることがあります。また、部分入れ歯では、歯の清掃が上手くできていないとバネのかかっている歯が虫歯や歯周病にかかってしまうこともあります。

入れ歯自体も噛む力によって大きな力がかかるため、バネが気付かないうちに折れてしまっていたり、人工の歯の部分がすり減ってしまうことが起こってきます。いわば、自動車のタイヤが走行距離によって擦り減ったり、ブレーキが摩耗するのと同じと考えていただければよいと思います。

そのまま、気付かずに使用していると、噛む力を支える歯ぐきを痛めたり、バネのかかっている歯を悪くしてしまう場合があります。ピンク色の樹脂の部分も長期間の使用とともに少しずつ傷などの劣化がおこります。そのため、かかりつけ歯科医に定期的に残っている歯と入れ歯のメンテナンスで受診をすることが大切です。目安としては3カ月に1回くらいの定期健診がよいでしょう。

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