癌やウイルス感染症の予防 ~家族を守るために何をすべきか~
秦 光賢(はた みつまさ)
日本大学松戸歯学部付属病院 心臓血管外科 教授
このシリーズの第1回で、健康寿命は平均寿命に比して約10年も短いというお話をしました。今回は日本の死因第1位である癌や、いまだに増え続けるコロナ肺炎の予防のための日常生活について学んでいただき、健康寿命を延ばす努力をしましょう。
- 免疫力を高めよう
免疫とは、体外から入ってくる菌やウイルス、体内に発生する悪性新生物を攻撃して排除する力です。免疫の主役は白血球ですが、その中で最も強い免疫力を持っているのがNK(ナチュラルキラー)細胞というリンパ球です。
NK細胞の力は絶大ですが、一方でNK細胞は非常に繊細な細胞です。精神的な緊張状態が続いたり、気分が落ち込んだりするとその力が減弱してしまうのです。“病は気から”とはよく言ったものですね。このNK細胞の力を維持するポイントは、腸内環境を整える・自律神経のバランスを整える・基礎代謝を上げるの3つなのです。
- 免疫力を高める食材や栄養素
腸内には全身の免疫細胞の7割が存在しますので、腸内細菌を正常に保つため乳酸菌やビフィズス菌入りのヨーグルトや納豆などの発酵食品を多くとると良いでしょう。またキャベツやバナナなども免疫賦活作用があります。おすすめの栄養成分はビタミンC、D、E、 亜鉛、ω3脂肪酸なども免疫賦活作用が知られています。低炭水化物食や高脂肪食は腸内の環境を乱し免疫力を下げてしまいます。
- 自律神経のバランス維持
規則正しい生活、何と言っても良質な睡眠は重要です。1日6~7時間の睡眠が最も効果的です。食事の時間も毎日決まった時間とし、朝食を抜いたり、寝る前に食事をするのはやめましょう。日中のジョギングやウォーキングも自律神経のバランスを整えるのに有効です。
- 基礎代謝を上げるために
筋肉の量を増やす(維持する)ことが重要で、特に筋肉量の多い下半身を鍛えることが効果的です。日中のジョギングやウォーキングはもちろんのこと、特にお尻や太ももは筋肉量が多いので、スクワットはお勧めです。高齢者で転倒のリスクを心配される場合は図1のようにテーブルやソファにつかまりながらやると良いでしょう。また体温を温めることも代謝の亢進につながります。シャワーですまさず40度程度の湯船に10~15分つかりましょう。
運動のためにはタンパクやカルシウムを十分補給し、サルコペニア(骨格筋量の減少)や骨粗鬆症の予防も重要ですが、カルシウムを骨に吸収させるためにはビタミンDや一日10分程度の日光浴が必要です。ビタミンDの豊富な食材は、椎茸やエリンギなどのキノコ類です(図2)。先にも述べたようにビタミンDには直接的な免疫賦活効果もあるために一石二鳥です。
新型コロナ感染やがんにならないように免疫力を高め、いつまでも家族のために若さを維持しながら、年をとるようにがんばりましょう。
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