Toukatsu-Mainichi「ジェッツ記」【01:2024年10月6日Bリーグ2024/25第2節:10月6日vs宇都宮ブレックス(LaLa arena TOKYO-BAY)】

ジェッツ記

 私にとって初めての千葉ジェッツふなばし公式戦取材は宇都宮ブレックスとの24/25シーズン開幕シリーズ第1節第2戦となりました。

 千葉ジェッツのホームアリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」に近づくにつれ、馬券片手の男性たちとすれ違うように、とちぎナンバーの車両や両チームのユニフォームやグッズを着た人々が増えていくのだが、皆、その足取りは軽かった。

 それもそのはず、試合当日のティップオフ寸前まで展開されていたと聞くチケット争奪戦やチケットリセール合戦を制した人たちだ。今すぐにでもアリーナへという気持ちはよく理解できる。

 ただでさえ、「千葉ジェッツ」という強豪チームのゲーム、そしてそのチームの素晴らしい新アリーナ開催の開幕戦、チーム愛、競技愛、各種推し活…他競技に漏れず様々な角度から構成されているであろうファンベースの強さを垣間見た。

 前日に開催された開幕戦はオーバー・タイムまでもつれるほどの熱戦(91-84)。期待高まるファンたちの感情をさらに高めたのはサンボマスターのオープニングアクト。時間にして、10分少々のタイトなアクトだったが、高い演奏技術とアリーナの音響の素晴らしさに驚いた。今春のアリーナ内覧会の際から、「LaLa arena TOKYO-BAY」は千葉ジェッツのホームアリーナであることに併せて、国内屈指の多目的アリーナへという意欲を強くプレゼンテーションしていた理由を痛感した。

 そして、やはり、この土地柄。会場のキャパシティでは倍以上を動員可能なアリーナは数あれど、公演や競技観戦前後の周辺施設での時間の楽しみ方には安心感があり、見やすさやエントランスやコンコースの開放感、トイレ内のアメニティ、ジャストサイズの視野を保てるこのアリーナのポテンシャルは高い。純粋に「このアリーナでコンサートや格闘イベントなどを見てみたい」。そんな気分にさせられる。

 見事なSTAR JETSのパフォーマンスから両チームがウォームアップに登場。気づけば、アリーナはフルハウス(9,739人)。比率は赤が8割。黄色が2割といったところ。シーズン開幕前の9月、一階のシートを千葉ジェッツブースターに開放して開催された「新シーズン決起会」での景色も壮観だったが、最上部のシートまで空席なしの景色はさらに壮観だった。

2024.9月に行われた決起会

 オープニングアクトで音響面や距離感の素晴らしさを実感してはいたが、千葉ジェッツのロースター紹介ムービーや呼び込みの際にあったレーザー照明をふんだんに用いた煽り演出のインパクトは現代的な「箱モノスポーツ」の強みであり、千葉ジェッツが戦うLaLa arena TOKYO-BAYというアリーナがいかに特別な空間であることの個性を印象付けるに十分。また、コート中央上部に構える見やすく大きなセンタービジョンに映し出されるグラフィックもちょうど良い。

 試合が始まれば、「GO! JETS!」と「DEFENSE!」の大コールに圧倒される。配信や中継で聴いていた以上のインパクトがあった。ブースターのみなさんはこのコールのリフレイン中も幸せそうだった。この一体感の巨大化は千葉ジェッツの強みとなっていくのだろう。

 富樫勇樹選手がドリブルを始めれば、アップテンポなBGMがコートを包み、「GO! JETS!」のコールが発生。嫌でも富樫選手に視線を送ってしまう。見事なハンドリングからの攻撃に夢中になる。パスを交わす際の選手たちの手の音、ステップを踏む足音、大歓声が生まれるわずかな合間に聞こえるネットの音もとらえることができる。その回数はとても多い。

 「1試合100点くらい見れるので大変お得です。ハットトリックで3点。満塁ホームランで4点。そう考えるとすごく多いです。千葉ジェッツ」

 JR京葉線で目にした秀逸なPRコピーは伊達じゃない。

 守勢に回れば、ダウンビートなBGMの中、「DEFENSE!」のコール。ジョン・ムーニー選手のリバウンドやシュートブロックに期待をしてしまう。速攻の応酬が披露された場合においても「GO! JETS!」と「DEFENSE!」の見事なスイッチングも対応。この臨場感や没頭感は見る者を虜にするし、コート内の攻防だけでなく、機敏なチームスタッフたちのベンチワークや一滴の汗の粒すら見逃さないコートキーパーの様子などにも目を奪われ、焼きつけたくなってしまうのだから。

 ゲームでは千葉ジェッツだけでなくリーグ全体の大注目選手である渡邊雄太選手と宇都宮ブレックス・比江島慎選手による日本代表マッチアップも見られた。先の「決起会」で富樫選手と渡邉選手から語られたパリ五輪遠征でのエピソードが頭をよぎる瞬間でもあったが、残念ながら、そのマッチアップの直後に渡邊選手が足を負傷するアクシデント(左足関節捻挫・全治6週間と公式発表)。

 賑やかだったLaLa arena TOKYO-BAYがこの日最も静寂に包まれた瞬間でした。

 それでも千葉ジェッツは厚い選手層を見せつけるような戦いぶりで宇都宮ブレックスの反撃を寄せつけず、勝利(80-61)。

 試合後の記者会見に登壇した富樫選手は、完璧な立ち上がりを見せながら、次第にもつれて、オーバータイムまで戦った前日の開幕戦に触れながらこう話していました。感じたのは「ただ勝つこと」だけではない強い意志でした。

 「昨日は前半残り2分のところで相手を勢いづかせてしまった。今日は点差をつけられたことはよかったが、『前半の終わり方』というところで昨日の反省を活かすことができた」

 また、開始4分ほどで負傷交代となってしまった渡邉選手の離脱については、さほどの動揺も見せず、こう話した。

 「彼(渡邉選手)は全力でコートへ戻る為に努力をしてくれるはず。でも、彼がいない千葉ジェッツというのは、『今までの千葉ジェッツ』でもあるので、今までやってきたことと変わらない。特に心配はしていない」

 そして、最後は素晴らしい賑わいを見せて千葉ジェッツとのフライトを始めた「新しいアリーナ・LaLa arena TOKYO-BAY」への思いについてこう話した。

 「新しいアリーナになって、試合での演出なども含め、かなりレベルアップしていると思います。バスケットの試合以外の部分でも楽しんで欲しいと思いますし、バスケットの試合でも、今まで以上にみなさんに喜んでもらえるように、プレーしていければいいなと思います」

 コートでは千葉ジェッツのポイントガードとして巧みなテクニックチームを操る富樫選手。試合後の記者会見はフラットで誠実な語り口のメディア対応でスポークスマンとしても一流だった。

 私にとって初めてのBリーグ取材。今回取り上げた以外にもたくさんの発見がありましたし、千葉ジェッツから多くを学びました。今年から取材を許された千葉ジェッツの「ブーストタウン」である柏市の記者として、チームや選手や競技のディテールに踏み込む前に、千葉ジェッツについて知り、学び、少しずつではありますが、それらを報告していきたいと思います。

(写真・文=神宮克典)