つくりかけラボ14
「和紙のフトコロ 墨のダイゴミ」
千葉市立美術館
4階 子どもアトリエ
開催中~5月26日(日)
入場無料
千葉市立美術館の子どもアトリエで開催中の、つくりかけラボ14「和紙のフトコロ 墨のダイゴミ」を訪ねた。「五感で楽しむ」「素材にふれる」「コミュニケーションがはじまる」を3つのテーマに、船橋市在住の美術家、荒井恵子さんが来館者と関わりながら新作インスタレーションを制作するというもの。会場には円形の卓袱台を取り囲むように真新しい和紙を張った障子が並ぶ。昭和の居間をイメージしたものか。
美術家荒井恵子さんに和紙と墨について話を伺った。
和紙に墨で描くことについて「水が関与するので、滲む時間がゆっくりと過ぎる。滲みの速度は墨によって違う。これは実際に対峙しないと見えない。育っていくのを待つ感覚。私たちに内蔵されている本当の時間、素の自分に戻る」。
墨を磨るという行為について「この墨はどんな表情を見せるのかを考え、呼吸と連動するように硯に触れる。墨の音を聞き、香りをかぐ。すると五感が元気になる」という。
去る2月18日には、同館1階のさや堂ホールで荒井さんのパフォーマンスが開かれた。1927年(昭和2年)に建設された同ホールは、旧川崎銀行千葉支店の建物。8本の円柱が並ぶネオ・ルネサンス様式の重厚な空間だ。
照明を落とし、静まり返ったホールに荒井さんと和紙だけが光のスポットライトの中に浮かび上がり、厳かな雰囲気の中で始まった。幼い子どもがコワイ!とささやく。天上から荒井さんを依り代にして、神が降り立つような荘厳な感覚、不思議な時間、空間が出現した。
息を潜めてじっと見入る観衆。墨の滲みや、かすれの妙味をアーティスト共に疑似体験する。20分弱のパフォーマンスが終了。観客からは惜しみない感動の拍手が荒井さんに送られた。
記者も和紙と墨に出合う体験にチャレンジした。
◆『墨と出合う』「市民から寄せられた墨の中から気になる墨をひとつ手に取る」。
◆『墨を磨る』「好きな濃さに磨った墨は硯の海に落とし、丘に水を数滴たらしてさらに磨る」。硯の「海」「丘」という言葉が想像力を刺激する。
◆『磨り終わった後』「刷毛に墨を含ませて和紙を広げ色味を見る」。にじみが美しい。「各々好みの絵を和紙に描く」。
◆『和紙に触れる』「障子の外側から、ゆっくりと和紙に穴を開ける」。和紙の抵抗は思いのほか強い。穴から覗く世界は虚構を見るようだ。この後、障子の内側に入り、昭和感漂う卓袱台(ちゃぶだい)の周りに座る。
◆『和紙の水切り、障子の穴ふさぎ』「自分が開けた穴をふさぐため、和紙を水切り。小部屋の内側から障子紙に開けた穴に貼る」。初めての体験には小さな感動がある。私にはここがクライマックスに感じた。入場・体験無料。▽問☏043・221・2311(千葉市美術館)。