「カンカンカン」。金属を叩くような甲高い音が聞こえてくる。看板には、関東変圧器材工業の文字。変圧器?道路沿いの工場は、外からでは何をつくっているのか、まったく見当がつかない。
これは「東葛工場拝見」の一回目にふさわしい謎の工場だ。いざ突撃。
耳慣れない「変圧器材」という言葉。身近な例で言えば、電柱の上に取り付けられているボックスの中にあるのが変圧器。電力会社でつくられた電力が変電所へ流れ、それが電柱を通る電線で一般家庭へ送られる。その過程で、家庭用の低いボルトに変圧する必要がある。その際に必要なのが変圧器。海外旅行へ行く際、ドライヤーなどを使う時にも小さな変圧器が必要な場合があるのをご存じの方もいるだろう。そう聞くと私たちの身近になくてはならない物だ。
関東変圧器材工業が産声を上げたのは、戦後間もない昭和22年。初代社長が、秋葉原でトランスフォーマー(変圧器)の製造、販売を始めた。当時から秋葉原は電気の街だったことが伺える。その後、昭和34年に柏市逆井に工場移転。当時は、まだ舗装されていない土手の側だったそうだ。
現在は、社員、パート含め20人が在籍。取引会社は日本の電気機器の草分けのタムラ製作所、電機精工社、フジヘン、フクダなど。
つくっているトランスの部品は、80種類にも及び、鉄と銅からつくられているトランス一個の重さは、小さな物で100㌘から大きな物だと400㌔㌘以上もある。
3代目社長の鈴木彦三郎氏は、「トランスの部品全般を手掛ける当社の仕事は、表に出る製品づくりではなく、縁の下の力持ちです。トランスは目に見えない物ですが、当社の部品がスカイツリーのエレベーターにも使われています。また、病院の医療機器、家電などにも使われています。多品種少量生産で仕事をしてきました」と語る。
トランスの供給は、中国などの海外製品も増えてきた。が、関東変圧器材工業はじめ日本の部品や製品は、高度な技術を誇り、優れた製品が大きな売りとなっているそうだ。
地震や台風などの自然災害の時に、大切なライフラインの一つが電気。 私たちにとって必要不可欠な電気を使った生活は、小さいけれど大きな技術力を持った企業に支えられていることがわかる。
(取材・文=高井さつき/写真=高井信成)
■関東変圧器材工業株式会社本店:東京都千代田区外神田4‐5‐1工場:柏市逆井3‐22‐23☎04・7176・7011