武くん(小3)は軽い自閉症傾向あり。知的には問題なし。突然の変更事項などにうまく対処できないことが多いため、学校には母親が付き添っている。クラスの友達とトラブルになると、武くんは母親に言う。すると母親が間に入り、武くんの特性などを相手に説明する。「武はこういうことが苦手なの。こういう風に気を付けてね」。
武くんには不安やこだわりを感じやすい特性があるため、確かに周囲の配慮やサポートは必要です。級友たちは毎回配慮を促されています。ここで考えたいのは、武くんにとって、そして級友にとっての成長はどこにあるか、です。『相手に嫌なことをされた。それをお母さんに言う。その相手にお母さんが直すよう言ってくれる。嫌なことが起こらなくなる』。この図式では自分が相手と対峙することなく、思い通りに事を運べます。新たなトラブルに発展することはありません。でも相手の子には武くんのお母さんに叱られたという想いだけが残るでしょう。人と人同士、実体験のなかで摩擦を繰り返すことでしか得られない、相互理解の場は失われています。
武くんの学校でのサポートがお母さんから、支援員の先生に代わりました。武くんがいつものように「○くんがぼくを無視したから無視しないように言って」と支援員の先生に言いました。先生は少し考えてから「無視されたのは悲しかったね。○くんはどうして無視したのかな。聞こえなかったりしたのかな。なんて伝えてみようか。一緒に考えてみない?」と声掛けしました。
友人同士の関係の中で、摩擦があったとき。◎他人の力を借りながらも、どう伝えたらいいか自分で考えてみること。◎伝えても、すべて自分の思い通りにならないこともあること。◎人を変えることは基本的にはできないこと。◎嫌な気持ちになるならば、場を離れるなど自分の行動を変える方法があることなど。今後武くんに学んでいってほしいことはたくさんあります。武くんの特性に配慮しながら、人間関係の学びの幅をできる限り広げておきたいです。
☎04・7146・3501 NPOゆうび小さな学園 杉山麻理江