3月に入った途端、気温がぐんぐんと上がり、一気に春めいてきました。モンシロチョウなども飛びはじめ、野山は再び賑わいが戻りつつあります。
本稿執筆時点では、まだ「さくら開花」のたよりは届いていませんが、それも時間の問題で、紙面がお手元に届くころには東葛地区でも桜咲く風景が広がっているかもしれませんね。
ちなみに桜の種類は、園芸品種も含めると星の数ほど存在し、専用の図鑑もあるほどです。その中で、最もよく植えられていて、公園や校庭などで見る機会が多いのがソメイヨシノです。そしてテレビのニュースなどで言われる「さくらの開花・満開」もソメイヨシノを対象としています(北海道の一部と沖縄を除く)。
ここまで書いておいて…なのですが、今回は桜ではなく、桜以外の早春の木の花、それも地味であまり見向きもされないものにフォーカスを当ててみたいと思います。
まず私の住んでいる場所は、現在は野田市ですが、それ以前は関宿町でした。その関宿町の木だったのがイチイです。このイチイの花が3~4月ごろに咲きます。同じイチイ科のキャラボクやカヤなども、開花期はだいたい同じです。ちなみに野田市の木のケヤキも、春の芽吹きと同時に開花します。花には雄花と雌花があり、その形は全然ちがいます。
柳の仲間も春咲きです。ふさふさとした花の穂を猫のしっぽに見立てたネコヤナギは比較的有名でしょうか。東葛地区では河川敷や水辺などにタチヤナギやカワヤナギ、マルバヤナギなどの野生種が生えていて、これらも早春に花穂を出します。公園樹や街路樹としておなじみのシダレヤナギも、4月の芽吹きと同時に開花します。
実は同じヤナギ科のポプラも早春に咲きます。ただ樹高が数十mにもなるため、花の位置も高く、見るのはなかなか難しいかもしれません。
秋の紅葉(黄葉)でおなじみのイチョウやカエデも、春の芽吹きとともに開花します。イチョウには雄株と雌株があり、それぞれ花の形が異なります。
他にもカツラやヤマモモ、タブノキ、クヌギ、メタセコイヤなど…。早春の散歩道に咲く地味な木の花は、挙げればキリが無いくらい存在します。皆さんも探してみてくださいね。
わぴちゃん(岩槻秀明)プロフィール
気象予報士。自然科学系のライターとして植物や気象など自然にまつわる書籍の制作に携わり、著書は20冊以上におよぶ。千葉県立関宿城博物館調査協力員、野田市史編さん委員会専門委員なども務める。宮城県生まれ野田市育ち。わぴちゃんホームページ