血統書付きのドアノック -中島舜

レイソルコラム

 2025シーズンからの柏レイソル加入が発表されている中島舜(流通経済大学サッカー部)。

 中島は流経大の右サイドを任される柏レイソルアカデミー出身のアタッカー。育成年代から攻撃の全てのポジションでプレーしてきただけに、ドリブルやクロスといった攻撃的な能力が武器となる選手。流経大での4年を経てレイソルのドアをノックした。

 あれは2年前の春、中島は関東大学リーグ選抜の一員として、Uー19日本代表との練習試合に出場。姿勢の良いルックアップとアタックでUー19代表を翻弄。サイドから何度も好機を作り出した記憶がある。そして、こんな話をしてくれた。

 「大学ではアカデミー時代とは全く違うサッカーをしていて、とにかく『走る』。最初は毎日地獄のように感じていましたけど、今はプレーにも良い影響が出ている実感があって。キツいですけど…走れないと試合に出れないんで(笑)」

 少年時代からボールを持てば速かった。スルスルっと前線に飛び出してフィニッシュに絡んでいた。その後、サイドMFを中心にプレーすることになる流経大での練習でその走りを高め、ハードワークの経験を手に入れたという。

 「自分の武器は『サイドからのチャンスメイク』と『守備でチームを助けられること』。2列目は左右でプレーできますし、大学では右SBも経験しました。2トップの一角としても守備から前を向いてゴールへという部分をさらに良くしていきたい」

 流経大にとって中島はシステム変更の肝。ある試合では、3トップの左からスタートして、前線の全ての角度からチャンスに絡んだと思えば、右WBや右SBとして試合を終えるケースもあるなど、能力的に幅の広い選手。

 この新しい中島を作った「この大学に来なければ得られなかった」という概念、言うなれば、数多の個性派選手たちを生み出してきたこの赤いユニフォームにある「血統書」のような感覚を中島はこう話す。

 「この4年でメンタル面を鍛えられました。最初の頃は自分で仕掛けて打開してみせることや『対人』への強さやそもそもの『勝負強さ』について、『戦術』というより、『目の前の相手に勝つ』というところを求められた。どのポジションでも守備の強度や走ることなどを必死にやってきた。先輩たちのやり方を見て自分のものにしてきたつもりですし、多少泥臭くたって、ボールを奪ったり、チャンスメイクに繋がれば、何もかっこ悪くないですから」

 だから、自分の姿をレイソルの試合へ投影する際もイメージは一歩踏み込んだものになる。

 「自分は山田雄士くんやサヴィオの位置での守備でチームを助けられるはずだと思って見ていますし、ボールを奪って仕掛けることもできるはず。どう奪って、そこからどんな判断が必要なのか、FWがどんなボールを待っているのかは観察していますし、しっかりとやってきたので、試合を見ながらイメージをしています」

 レイソルのキャンプや練習参加に加わって得た感覚や自信が少し踏み込んだイメージを生むのだろうし、このカテゴリーからやってくる選手はこのくらいの気概を持ってレイソルへ加わってくるものだ。

 もちろん、まだまだ中島は1人の「プロ内定選手」に過ぎないし、中島たちよりずっと前に同じユニフォームをまとっていた「ムービースターのようなルックスをしたファンタジスタ」でも、大学サッカー界はおろか、パリ五輪にまで轟くほどの閃光を放ってみせた「超新星」でもないわけだが、中島は彼の加入と活躍を待つレイソルサポーターにとって分かりやすい理想像を教えてくれた。

 「イメージしている理想の姿を言葉にすると、『チームを助けることができる選手』。自分の中でモデルの1つとしているのは伊東純也選手(ランス)ですね。攻守でチームを助けられることや『個』で違いを見せられる、そんな両面を持った選手になっていきたいって思っています」

 私が小学生時代から知っている中島にしてはかなり強く大きく出たし、思い切りハードルを上げてきた。

 「本当に『純也』って書いちゃっていいの?」と聞けば、「はい、いいですよ!」と頷いてもみせた。

 レイソルへ帰還するよりも、レイソルの為に戦うことを考えているという中島なりの覚悟と受け取ろう。

(写真・文=神宮克典)