「超新星」ー関根大輝

レイソルコラム

 

 日本サッカー協会は、3月開催の国際親善試合(22日対U-23マリ代表・25日対U-23ウクライナ代表)に向けたU-23日本代表を発表した。

 今夏開催予定のパリ五輪出場権を懸けた「AFC U-23アジアカップ2024」を目前に控えたこのタイミングで、柏レイソルからはFW細谷真大とDF関根大輝の2人が選出された。

 フル代表も経験した細谷は、U-23代表でもレイソル同様「エース」とされる存在であり今回の選出にも疑問の余地はないだろう。

 1月のフル代表での活動の中でも、「自分はどちらに呼ばれても構わない。パリ五輪もW杯も自分の夢ですから、出場したい気持ちに変わりはありません」と話していた。ハードスケジュールとなりそうだが、きっと乗り越えていくことだろう。

 今回の注目は関根だ。

 拓殖大学に所属したままJリーグ特別指定選手として昨年5月にレイソルでデビュー。以降同代表へ数回選出されており、既に欧州遠征やアジア大会でのプレー経験を持っている関根。今回も柏レイソルアカデミーとのゆかりを持つGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)やDF内野貴史(デュッセルドルフ)ら、個性的でタレント溢れる欧州組たちも数多いメンバーの中に名を連ねてみせた。

 レイソルでのデビュー時から見せている高いポテンシャル。特に攻撃参加時の迫力は練習や努力だけでは出せないものに見えた。

 そして、今季は拓大に籍を残しながら、レイソルに「アーリーエントリー」を済ませ、J2千葉との「ちばぎんカップ」と開幕からのJ1の4試合に出場。すでにプロのレベルに着々とアジャストしつつある。

 専売特許はやはり右サイドでのスピード感抜群の攻撃参加だが、非凡なパス能力を活かしてピッチの広いエリアで存在感を見せている。

 ただ、この4試合、いくつかの停滞もあった。

 「昨夏のアジア大会に出場した際に『フィジカルやスピードの違い』を感じて帰ってきました。上のレベルのスピードに適応できるように、大学でも取り組みながら、レイソルでも自分を追い込んできましたし、今季は加入をさせていただきましたから、レベルアップしたフィジカルやスピードでアピールをしていきたいし、攻撃参加の推進力や足元の技術を見てもらえたらと思っています」

 千葉戦では良さを出そうとするあまりやや空回りした。右サイドに張り出すも効果的な働きを残せなかった。「ルーキーなんだから」と言ってしまいそうなところだが、チーム全体の好パフォーマンスにも触発されてか、関根はこの短期間で徐々に自分の穴を見つけ、塞いでいるのだ。

 開幕の京都戦では苦しみながらも必要な「バランス」を見つけた。神戸戦では試合展開を見極めてポジションを取ってみた。磐田戦ではダイナミックな攻めと粘り強い守備、視野とレーンを変えてのアンダーラップも上手くいった。

 直近の名古屋戦では先制点を許したFKでのヘディング対応という新たな課題はあったが、マテウス・サヴィオのお膳立てから思い切り良く右足を振り抜き、あわやというシーンも。ポストを叩く鈍い音を残し観衆を唸らせた。また、逆サイドからのクロスをヘッドで中央へ折り返すなど、多彩なアイデアも見せる。ゴール前で「+1」となれるフィジカルとスピード、それを支える前向きなメンタルも大きな武器だ。守備でも大きく破綻しない勘の良さを昨年のレイソルデビューからずっと見せ続けている。

 「失点をしてしまった時間帯は自分もバタバタしてしまった。頭が整理できていなかったんですが、ちょうどあのシュートを打って頭を切り替えられた。シュートだけでなく、サイドチェンジで展開を変えることも自分の特長だと思っています。まずはそういったプレーを常に成功させたいですし、絶対に自分の評価にも繋がってくるので代表でも見せていきたいですね」

 名古屋戦を終えてすぐの言葉からも切り替えの良さを感じさせる。そして、やはり、187cmというサイズは何にも変え難い「才能」である。「そうですね!」と関根も頷きながらこう続けた。

 「このサイズ、この身長で右SB。このポジションの選手でこの個性は自分以外にあまりいないんじゃないかと思います。だからこそ、自分らしい右SBを確立したいですね。自分には『海外』という夢があって、そのためにも『レイソルで多くの結果を出して、代表へ』と思い、レイソルにお世話になると決めた。そうなったらいいなって思っています」

 黄色いユニフォームから青いユニフォームに着替えて、「全く知らないチーム」に行くわけではないあたりにもつい期待をしてしまう。国内合宿からアジア大会、欧州遠征を挟んでのこの選出。いわゆる「叩き上げ」だ。1年前倒しのレイソル加入も含めてしっかり階段は上ってきた。とにかく、怪我なく素晴らしい時間を過ごしてきてほしい。

 長身の右SBといえば、「ある選手」との比較・比喩を目にすることも増えるだろうが率直に言って、「それはそれ」でしかない。関根には関根の道があり、その道を進んでほしい。

 そして、最後に。

 興味深いのは、このクラスの潜在能力を持った選手でありながら、レイソル強化部スタッフが強い関心を抱き、日立台での練習参加を打診した1年ほど前、まだどのクラブからも同様の打診が無かったということだ。どのような「シンデレラストーリー」も、見初める側の人間がいなければ始まらないのだ。

 今はストーリーの序章。ちょうどテンポよくページをめくってソファに腰を落とし直したくらいのころだろう。

 ストーリーの目撃者となる私たちが次の章を読めるまでそんなに時間はかからなそうだ。

(写真・文=神宮克典)