稀代の俊英、相見える。

レイソルコラム

 2月21日、国立競技場でヴァンフォーレ甲府対蔚山現代FCによる「AFCチャンピオンズリーグ(ACL)ベスト16」第2戦が開催された。

 韓国・蔚山での第1戦の敗戦を受けて試合開始早々から猛攻を仕掛けた甲府だったが、蔚山に先制を許し、一度は同点に持ち込んだものの、レイソルのレジェンドであるホン・ミョンボ氏が監督を務める韓国リーグ王者・蔚山が2点目を奪って逃げ切り、来月に控える同大会のベスト8進出を決めた。

 この雨中の大熱戦が繰り広げられた国立競技場のピッチには元レイソルの選手が2人いた。

 まずは蔚山のMF江坂任。卓越したセンスや高い能力は今もレイソルサポーターの記憶に新しい選手。この日はやや守備的なポジションでのプレーとなったが、蔚山の先制ゴールへ繋がる見事なパスだけでなく、随所に高いテクニックを披露。江坂を経由した蔚山の攻撃は甲府を苦しめた。

「分かってはいたが、立ち上がりの甲府の猛攻に押し込まれた中で、良いパスを出せたと思うし、得意な形ですし、ゴールに繋がって良かった。蔚山では最初の数ヶ月の間に環境面の違いやサッカーの違いなど苦労をしましたが、今は中盤や攻撃の様々なポジションでプレーしているので、今日も戸惑うことなくフィットできていたと思います」

 甲府にはレイソル生え抜きのMF武富孝介がいる。1点を追う後半途中からの出場となったが、右サイドから見事なコンビネーションの起点となって好機を作り出したと思えば、レイソル時代から披露していた中央からのドリブルで蔚山守備陣をこじ開けて、ゴールへ迫る活躍を見せて同点に追いつく機運を高めた。

 「自分にとってはレイソル時代以来、2度目のACLで昨年から何試合か出場できているが、今日の出場は少し驚きがありました。ここまで何度もケガが続いていて、甲府に対して満足な働きをできていない中でもあったので。当然高まる気持ちもありましたし、良いプレーも出せていた分、すごく悔しい結果となったが、良い試合ができたと思う」

 レイソルのクラブ史で忘れてはならない2人の名手は試合を動かす見事な活躍を見せた。2人のキャリアはそれぞれで置かれた状況もまたそれぞれ。両選手が同時にレイソルに在籍することはなかったし、サッカーというスポーツ競技である以上、勝敗が付きもの。甲府のACLは終わり、蔚山は次へ進むのだが、ACLという大きなステージで相見える素晴らしい機会に立ち会えたことが誇らしかった。

(写真・文=神宮克典)