ららぽーと柏の葉の前面に広がる敷地。点在するハウス群。ここは、千葉大学柏の葉キャンパス内に事務所を所有するNPO植物工場研究会だ。研究会では、人と環境にやさしい最先端のサイエンス農業を日夜目指している。
2009(平成21)年、農林水産省のモデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業を千葉大学が受託し、研究会を作ったのが始まり。敷地内には、6棟の太陽光型植物工場と4棟の人工光型植物工場や関連施設がある。ここでは、ヤンマーグリーンシステム(株)、三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(株)、(株)吉野家ホールディングスなどの企業による葉菜・果菜の研究、栽培、収穫が行われている。
ハウスには様々な工夫がなされている。太陽光を利用した高さ6㍍もある太陽光型植物工場の天井には、光が入りやすい透明な「長寿命型フィルム」を使用。これは、日本の技術により開発されたもので、通常のフィルムに比べ透明度が保たれ劣化が起こりにくく長期間の使用に耐えられる。ここでは、栽培環境を制御し、一般のハウスに比べ二倍以上のトマトの収穫を可能にしている。
人工光型工場内は、植物から蒸発する水をリサイクル。何段にも組まれた棚では、平地で栽培する葉菜の100倍もの収穫がある。これは、水が貴重な砂漠地帯や大都市のビル街でも注目の栽培法だ。
土に植えるのではない水耕栽培の大きなメリットは、植物の根を容易に管理でき、必要な肥料成分を無駄なく根に与えることができる。また、水の利用効率が高く、肥料の環境への流出を防げることだ。
これら植物工場では、天候や気候に左右されることの無い安定的な生産が見込まれる。また、都市部や近郊で生産できるので、消費者に最短で届けることが可能。できた野菜はビタミンCが豊富で鮮度が長持ちするという特徴がある。
環境面から見ると、冷房、暖房など石油で温度を調節する時代は終わり、現在は電気を使用したり、雨水をリサイクルしたり環境に配慮した取り組みを実証。北米、南米、アジア、ヨーロッパ各国から多くの人が視察に訪れている。
植物工場では、自動化や機械化など最先端の農業研究が進む。温度や生育具合をコントロール出来ても、農作物は人間の口に入る物。「生き物を育てる感覚」を持っていることが、美味しくて栄養豊富な食物を作る大切な点だろう。
(取材・文=高井さつき/写真=高井信成)