ヨーロッパ有名ブランドのコサージュを手掛けた人情工房 -フラワーデザイン三光

なにつくってるの?東葛工場拝見

 子どもの入園式や入学式、または卒園式などでコサージュをつけたことのある人は多いだろう。パーティーやおめでたい席で、コサージュはさり気なくその人の個性を光らせる存在だ。

 おしゃれには欠かせないコサージュを作り続けている会社が、柏市逆井にあるフラワーデザイン三光だ。創業は、1917年、大正時代に遡る。

 現在の社長・下瀬雅也さんの祖父により創設され、当時は台東区の御徒町で工房を構えていた。1923(大正12)年の関東大震災の時は、皆で不忍池へ避難したという昔話を聞いていたそうだ。

 創業当時は、ヨーロッパなどの女性がかぶる帽子に飾られている花を制作していた。その後、二代目の時、葛飾区新宿に移転。柏市へは50年前に引っ越しした。

 一見すると普通の住宅のような外観。だが中へ入ると1階から3階まで材料の布やそれを型取る機械、染め粉などが置かれ、細かく仕切られた工房となっている。

 現在は、社長含め9人のスタッフが在籍。コロナ禍で一時業績が落ち込んだが、最近、再び受注が増え始めた。

 今年の3月には名古屋の幼稚園の卒園式や小・中学での卒業式で4万個のコサージュの注文が入った。その他、有名私立幼稚舎へもコサージュを提供している。

 世界に名だたるファッション・ブランドのコサージュも手掛けたことがあり、そのことは、今でも社の誇りになっているそうだ。

自社で多くを作成している抜型や押し型で花びらを製作

 コサージュの繊細な色を染めるのは、社長の手仕事。染料の薬品を混ぜ合わせて色作りをすることは難しい作業だが、同時にやり甲斐となっている。社長みずから抜型や押し型を制作することも多い。デザインは、メーカーや問屋からの提案と三光スタッフの意見を出し合い考えていく。作品は、一次問屋、二次問屋、デパートを経て消費者の手に渡る。

 「問屋を通すことで自社の儲けは減りますが、同じ業界で働く身として、彼らから仕事を奪うことはできません」と社長は語る。大手企業にはない職人が集まる工房の人情が伺える。

(取材・文=高井さつき/写真=高井信成)


フラワーデザイン三光 柏市逆井5‐24‐1 ☎04・7169・1124