二つの季節しかない村 10月11日㈮公開 

キネマ旬報シアターおススメシネマ

 トルコ、東アナトリアの雪深く貧しい小さな村。プライドの高い美術教師サメットはこの村を忌み嫌っているが、村人たちからは尊敬され、女生徒セヴィムからも慕われていた。

 ところがある日サメットは、女生徒セヴィムらから虚偽の“不適切な接触”を告発される。一目置いていた生徒からの裏切りともいえる仕打ちに、サメットは困惑し、怒る。しかし、その後のセヴィムは何も語らず、眼差しを向けるのみ。

 同じ頃、サメットは美しい義足の英語教師ヌライと知り合う。

 雪深い大地の沈黙と、それに耐えかねるかのように苛立ち、憎悪を募らせていくサメットの対比は圧巻。雄大なロングショットと、息もつかせぬ会話劇が反復され、凄まじい緊張感をもって物語は展開される。

 この映画は198分という時間が短く感じられるような作品では決してない。しかし現代を生きるひとりの人間の狡猾さや曖昧さを正面から受け止めるためには、必要な時間だ。

 『二つの季節しかない村』を見るとき、人間、そしてあなた自身の醜悪さに目を背けることはできない。その覚悟を持って劇場に足を運んでいただきたい。

 (キネマ旬報シアター 鈴木結太)