戦場のピアニスト 4Kデジタルリマスター版

キネマ旬報シアターおススメシネマ

 今年も残すところ1ヶ月となり、すっかり冬の空気になりました。今回ご紹介する作品は、激しい戦火の中を生き延びたピアニストの物語です。


 ユダヤ人のピアニスト、シュピルマンは、1939年に第二次大戦が勃発し、家族とともにワルシャワ・ゲットー(ユダヤ人隔離居住区)へ強制的に移住することになります。自由を奪われ、常に死の恐怖に怯える毎日。やがて数十万のユダヤ人が強制収容所に移送される中、ゲットーを逃げ出すシュピルマン。しかし本当の地獄は始まったばかりだったのです。ことごとく人間の尊厳を踏み潰されながらも、決して“生”を手放さず、希望を失わないピアニストの気高い姿に心動かされる作品です。


 監督のロマン・ポランスキーは、幼い頃をゲットーで過ごし、母を収容所で亡くしています。そのためか本作は、目を背けたくなるほど徹底的に戦争を映し出しています。しかし、そんな容赦のない作品だからこそ「音楽の力」をリアルに、より鮮明に感じられるのでしょう。刹那的に敵味方を超えて魂が触れ合うようなショパンの響き。4Kリマスターで甦った傑作に、ぜひ劇場で出会ってください。


(鈴木結太)