印西市本埜(いんざいし もとの)に「白鳥の郷」(はくちょうのさと)があると聞き、車で向かった。利根川沿いを走る国道356号まで出て、成田方面へと走る。小林駅を目指し、その先の農道へ入ろうとしたが、通り過ぎて安食駅付近まで行ってしまった。

戻る途中で「白鳥の郷」という小さな看板が目に入った。細い道に入ると再び小さな看板。道路工事で交通整理をしている男性に尋ねると「ここをまっすぐ西へ」と。
ゆっくり走り、周囲に目を凝らしたが、広大な田んぼには白鳥らしきものは全く見えない。1㌔ほど走ると三つ目の小さな看板を発見。矢印に従って行くと白鳥が白い米粒のように遠くの田んぼの中に見えた。100羽ほどだろうか。車を止めて遠くに見えるプレハブ小屋まで歩いて行く。寒い!


小屋で「本埜白鳥を守る会」事務局長の森口さんに話を聞いた。「1992年11月の6羽の飛来から年々増え続けている。ハクチョウは例年10月中旬から2月下旬まで滞在。木枯らし1号に乗ってやって来て、春1番に乗ってシベリアに帰る。3000㍍上空を時速120㌔の偏西風に乗って飛んでいる」と説明してくれた。渡り鳥の習性にロマンを感じ、ナビゲーション能力に興味を抱いた。


森口さんはほぼ毎日来てハクチョウを見守っているが、「見学者にはハクチョウが驚くような大きな音を立てないなど、必ずマナーを守ってほしい」と話す。小屋の壁には1992年6羽から2023年1225羽までの年度別飛来数が掲示されていた。毎年1000羽を超える飛来数はものすごい数だ!


見学者の車のナンバーを見ると、都内や埼玉、茨城からの車もあった。千倉から来た男性二人連れは成田山新勝寺への初詣の帰りだという。

「いい写真がとれましたか」と、望遠レンズ付の高性能カメラを抱えた男性に声をかけた。「ハクチョウは動かずじっとしているので、まだ撮れていない。3時頃に動き出すのではないか。それまで待っている」と辛抱強く、撮影には慣れた様子。


快晴なので北西方面には筑波山がはっきりと見える。そこから吹き下ろす風が体に沁み込んで来た。水を張った田圃にはカモの群れが静かに浮いていた。
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不意に、数羽の白鳥が飛び上がった。見学の人々も動く。太陽が眩しく、シルエットのハクチョウは実に美しい。夢中でシャッターを押したら、7羽ほどの群れが写真に収まった。

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◆今回の散歩データ。JR小林駅から白鳥の郷まで徒歩約40分。車で約10分。
【たっちゃん】千葉県在住。ワインを愛し、テーマに沿って、アートとレコードを楽しむ会を主催する。古書探索と街歩き、料理作りが日課。