山野井誠(やまのいまこと)さん
印西市の千葉ニュータウン中央駅より徒歩15分。自然豊かな環境に立つサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「戸神(とかみ)ホームズ」。エントランス内でのイベントやスポーツジム、図書ラウンジなどを備え、高齢者には生きる喜びを見出せる空間だ。
「老いて行くだけでなく、新しい出会いを見つけてほしい」と語るのは「戸神ホームズ」を運営する山野井誠さん(59)。敷地内には「戸神ベイカリー」と児童向けの「とかみらいぶらり」も併設され、地域の人々も足を運びやすく、親しまれている。
戸神ホームズ設立のきっかけは約12年前、80代後半の父の老人ホーム入居。入居した父には不満はなく、子どもたちは安堵したが、父はだんだん衰えが目立つようになり、車椅子に乗り、やがて寝たきりになり、入居から8カ月で他界した。
山野井さんはその後一年以内に三つの理念を基にサ高住「戸神ホームズ」を造ることを構想。①入居者の自立を妨げないことで健康寿命を延ばす。②災害時の安全を確保する。③入居者と地域の方に愛される施設にする。
「自立のポイントは、出来ることはなるべく自分ですることが大切。施設の居室にはキッチンがあり、さらに共有のキッチンもある。小さな農園もあるので、そこで育てた作物を調理することが出来る」と話す。
海外在住時に現地でマグニチュード8の地震を経験した山野井さん。そのため、強固な地盤の上に施設を建設することにはこだわりがある。建物は耐震性と防火性の高い鉄筋コンクリート造り。ソーラー蓄電システムを装備、一週間分の水と食料の備蓄など、可能な限り大地震や災害への対策を取っている。
「慣れない土地に越した際には知人も少なく心細いもの。職員は相談に乗るが、一緒に趣味を楽しむ地元の友人が出来ればもっと良い」。衰えて行く人に対するケアの辛さを感じつつ、惜しみない愛情を注ぎ、そこに喜びを見出している様子だ。
入居者の高橋健夫さん(78)は「共有スペースにはスタッフさんがいてくれて、食事やお茶をしながらおしゃべりが出来て、日々穏やかな幸せを感じている」と話す。
隣接の戸神ベイカリー設立はサ高住より5年前。「戸神地域に子どもから大人まで集まれる場を作りたかった。パンが並んでいるだけで人はにっこりする」とうれしそう。駐車場では、夏は盆踊り、秋はハロウィンなどのイベントも開催。500人以上の地元の人々が集まる戸神地域の風物詩となっている。
※開所2022年6月。部屋数20室、現在入所者は12名。
●次回は畑中由美子さんにバトンを渡します。