●K太先生の本棚 19

貴方の日本語は大丈夫?

北原保雄著『問題な日本語』は、日本語学者である筆者が編者をつとめた『明鏡国語辞典』の刊行を記念した、ある取り組みから生まれました。それは全国の高等学校の国語の先生に「気になる日本語」を指摘してもらい、そこに「どこが?なにが?どうおかしいのか」と解説を加えていくものです。

  大きな特徴は、問題のある表現があったとき、単に「使ってはいけない」「この用法は間違っている」と指摘するだけではなく、どうしてそのような表現が生まれたのか、「誤用の論理」を研究している点です。

  例えば、定食屋さん等で「こちらきつねうどんになります」といった言い方を聞くことがあると思います。この表現は文法的には正しいのですが、話し手の伝えたいことと聞き手の期待することとが食い違ってしまうために、不自然に感じられてしまうのです。どういうことか…

  「なる」は「人為的ではなく、自然のなりゆきで推移変化して別の状態が現れる意」の言葉と辞書には説明されています。また、〈別の=新たな状態〉には、「変化」と「予想から外れる」という二つの場合が考えられます。 
 ですからそのままでは「(これから)中身が自然ときつねうどんに変化します」という意味になるのです。

  ところが、お客さんは当然完成したきつねうどんが出てくると思っているので、結果的に噛み合わないのです。 

  お店側は「お客様の想像から外れるかもしれないけれど、こちらが当店のきつねうどんなのです」と後者の意味で断りを入れるために使うようになったと考えられますが、いずれにしても注文通り出てくると期待する客側には違和感が残りますね。

  身近でおかしい日本語が満載の本書ですが、続弾(二巻目)では「歌わさせていただきます」などの「さ入れ言葉」や、「ピーマン食べれる」などの「ら抜き言葉」についても迫っていきます。

  自分の日本語が怪しいと少しでも思われた貴方、必読の書ですよ。

■K太先生
現役教師。教育現場のありのままを伝え、読書案内などを執筆する。
 

 
戻る