「最高の結果を掴みたいです。レイソルはそれができる」ーディオゴ・デ・ボルバ・リニャーレス

レイソルコラム

 

ディオゴ・デ・ボルバ・リニャーレスはブラジル出身の40歳。ブラジル・UAE・中国などのチームでフィジカルコーチを歴任してきた手練である。

 昨年、名門クラブ・フラメンゴ(ブラジル)から柏レイソルへやってきたディオゴコーチは、ネルシーニョ監督とは2017年のスポルチ・レシフェ(ブラジル)時代に共に戦った縁を持つ。

「フラメンゴはブラジル有数のトップクラブ。クラブの歴史もそうですし、財政面や設備もトップ。一昨年はブラジル全国選手権で準優勝を経験しましたし、クラブW杯でも良い結果を残しましたよね。近年のフラメンゴの成功の中に身を置くことができ、昨年はレイソルでJ2リーグ優勝を経験させてもらった。だから、今年は…ってところでしたよね」

 ディオゴコーチに話を聞いたのは、ちょうど新型コロナウィルス発生によりルヴァン杯湘南ベルマーレ戦が延期となった頃だった。

 先行きが見えなかったこの時期にディオゴコーチが語った当面のプランは、予想外の中断期間の長さもあり実現できなかったことが多いが、その言葉の中から信念が垣間見えてくる。

「週に1試合のペースで選手たちをコーディネートしていくことが理想ですから、こういった世界的な異例の事態下ではゲーム形式の練習を効果的に行うなどの工夫が必要になる。ただ、選手にとって練習というのはあくまで『練習』であって、試合とは確実に異なる。開幕戦のように選手たちに良いプレーをしてもらうために、またその良い状態を維持してもらうため、本番の試合に臨むアプローチを繰り返していく必要を感じています」

 ディオゴコーチはネルシーニョ監督や井原正巳ヘッドコーチ、栗澤僚一コーチらに混じって前のめりで選手たちに声を掛けながら、またその周囲を歩きながら熱い視線を送っている。

「選手たちの毎日の数値から、状態や課題を把握することも大切な仕事です。また、監督が求める戦い方にフィットするコンディションを作り上げることも大切。私の場合はこの2点を天秤にかけながら仕事を進めるイメージですね。だから、練習メニューの至るところに様々な工夫を施して、選手たちの様子をつぶさに観察していくことも、監督が用意する戦術面からの逆算をしながら工夫をすることも両方必要なんです」

 レイソルへやってきて2年目。細かい精査を繰り返すうち、興味深いデータが集まっているという。もちろん企業秘密扱いの部分もあるが、ディオゴコーチを驚かせた一部について教えてくれた。

「日本人選手たちは素晴らしいですよ。データ上の数値そのもので比較すると、実はブラジルより日本の方が高強度の状態でプレーしている回数が多く、長いんです。サッカーは戦術や技術、メンタル、それに気候などが絡む難しい競技。数値は大切なデータでひとつの指標ではありますが、みなさんご存知の通り、その他のあらゆる要素が折り重なって結果へ繋がる競技ですから、断言はできないものの、数値上は十分素晴らしいですし、更に良くなっていくでしょう」

 そこにジムワークを終えた古賀太陽選手が通りかかるー。

ディオゴコーチに古賀選手をどう評価しているか聞いてみた。「彼のスピードやスプリントはもっと評価されるべき能力ではないか?」と。すると、大きくうなずいたディオゴコーチからとても興味深い答えが返ってきた。

「確かに太陽のフィジカル的潜在能力は素晴らしいです。技術も高く、高い戦術理解力もあるアスリートの1人で、自分の持つスピードやパワー、持久力を余す事なく出し切れる。先天的な潜在能力や責任感もあるかとは思いますけど、太陽のように、『戦術理解度』と『ポジショニング』に優れている選手というのはの高いランニングをベースに攻守で効率良く、強度あるプレーをできるもの。グローバル化が進むサッカー界ですが、世界中のどの選手にとっても、その2点はとても大切な要素だと私は考えています」

質の高いランニングについて話すうち、開幕戦のコンサドーレ札幌戦で見せたマイケル・オルンガ選手の走りについて話が及んだ。64分の速攻の中でオルンガ選手が見せたランニングには驚かされた。切り替えの反応や初速もさることながら、中間走での爆発的な加速が印象的だった

「ミカの場合はあの恵まれた体格、骨格の違いなどで説明がつく部分もありますが、ミカ自身が自分のフィジカル的潜在能力とストロングを理解していることが大きいです。さらに言えば、性格的にとても知的でストイックな選手ですから、レイソルの戦術の中でミカの最大の武器であるスピードを高める、質の良いランニングをするために何が必要なのかを学び、日々努力を継続している。それが良い形で表れていますよね」

ディオゴコーチには別の一面がある。レイソルがゴールを奪った瞬間や相手から不必要なチャージを受けた瞬間に、真っ先にベンチ前に駆け出して声を上げたり、または祝福の輪のど真ん中で熱い抱擁を交わしているのだ。そのスピードは驚異的である。

「そうかい(笑)?じゃあ、これからもっとスピードを上げていかないとね!ただ、グループの一員として、私も選手たちと共に戦っているし、彼らを応援する、祝福する気持ちが溢れているのは事実だよ(笑)」

そこまでするのには理由がある。

「彼らの姿勢は『プロ』そのものだと言えます。実は私は数年前から『いつか日本のJリーグで仕事がしてみたい、生活をしてみたい』と考えていたんです。昨年ネルシーニョ監督に声を掛けてもらいプロジェクトに身を投じてみると、私が過去に仕事をしてきた国々の選手たちと比べても、日本の選手たちはプロフェッショナル。それはイメージしていた以上で、規律も重んじている。そんなグループで仕事ができているのは幸せだし、また素晴らしいことに彼らからの信頼も得られている。この素晴らしいグループでもっと良い関係を築き、最高の結果を掴みたいです。レイソルはそれができる気がしているんです」

 昨年の今頃レイソルには「勝利の文化」の風が吹いていた。選手たちの質が向上し、活躍し、戦術的に成熟し、結果に繋がったのは、ディオゴコーチの働きと支えがあってこそだった。今シーズン、歓喜の中心にいるディオゴコーチの姿が何度見られるか、とても楽しみだ。

(写真・文=神宮克典)

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