●わたしの街の旅スケッチ

何気ない散歩道鷺沼

文と写真 志和浩司

鷺沼は鎌倉幕府の歴史を記した史書「吾妻鏡」に登場する。石橋山の合戦に敗れた源頼朝が安房の国に逃れ、再挙をはかるため鎌倉へ向かう途中、鷺沼に立ち寄ったらしい。

昭和40年代、京成津田沼駅の周辺は南口ロータリーで客待ちのタクシーがいる程度でずいぶんひっそりしていた。今は店舗も増えて様変わり。

その南口から習志野市役所へ向かう道を歩く。市庁舎前の市民広場には噴水があり、子どもたちがたわむれている。古風なガス燈や彫刻もあって、なかなか良い雰囲気だ。

鷺沼小学校をすぎると、道はゆるやかに下る。十字路を左に曲がると、やがて陸橋。空が突然、広くなる。

陸橋を越え右に折れると鷺沼台の住宅地。昔は家も少なく、大きな沼があったとか。カエルや、よくヘビも出た。今はただの住宅地だが、そんな何気ない風景がまたいい。

どこまでも歩くと、十字路にさしかかる。左に曲がり、やや大きめな通りに出たら右折。あとは道なりに進めば、京成大久保駅にたどり着く。

時間にして約一時間。軽い疲労感を癒してくれるお店が「久和藍伽(くわらんか)」。オーナーの藤代一さん(51)が脱サラして、奥様とともに平成3年に開店した、くつろぎのお店。料理やデザートはすべて手作りのこだわり、セットコーヒーもトアルコトラジャだ。「ゆっくりと、くつろいでいただける空間を作りたかったのです」。店内は、陶芸家たちの作品で彩られている。眺めるだけで時間を忘れ、心身の疲れが消えていく。


市営ガスの供給を行っている習志野市にちなんで、市役所前の市民広場には、7基のガス燈が。

京成津田沼駅南口から市役所を通りすぎ、鷺沼小学校へとつづく、まっすぐな道。

地元の人たちの手で、街角は花で彩られている。歩いていると、花に囲まれた時計が。

鷺沼台へとつづく陸橋。上っていくと、気持ちいいぐらいに大きな空が広がっている。

何気ない住宅街。昔は沼地があって、登校時には舗装されていない道にカエルが飛び出してきた 。

京成大久保駅へとつづく道の途中に球体のオブジェ。こんな発見もぶらり散歩の楽しさだ。

「久和藍伽」は京成大久保駅からすぐ。TEL047〜472〜7540(営業時間10時〜19時ラストオーダー、日祝休)

店主の藤代さんは、もともとアンティークが趣味だった。陶器にも造詣が深く、えりすぐりの作品を展示(販売も可)。

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