●K太先生の「 放課後の黒板消し」 44

テスト返却悲喜交々

 悲喜交々(こもごも)とは、喜びや悲しみがいれかわりたちかわり起こることです。近年では、その場に喜ぶ人もいれば悲しむ人もいる場合にも用いられていますが、もともとは心の中に次々と起こる感情を表現した言葉でした。

 さてさて、このどちらの場合も「テスト返却」の瞬間の教室にぴったりの言葉です。学校によってテストの回数やタイミングは様々で一様には言えないかもしれませんが、特に期末テストの返却は一大イベントになります。

 中間試験であれば、各教科の授業でそれぞれ返却と解説がなされますが、期末試験は一度に全教科が返ってくるのです。配る側としては、集中して採点ミスなどがないかチェックをして欲しいので「結果に一喜一憂せずしっかりと確認すること」と指導しますが、生徒の様子はそれどころではないことが多いのです。

 先日の答案返却では、「何から返して欲しい?」と問いかけると「化学だけはやめて」や「先に厳しいやつ。古文でお願いします」などの必死の叫びが返ってきました。

  「では、平均点が高めの世界史から……」と言えば「えーっ!今回高いんですか。それはそれで困る。ライバルと差がつかない」と言ってみたり、「現代文はなかなか厳しかったようだね」とつぶやいた途端に無言になって青ざめ始める生徒もいたり。「全然勉強してなかったしなあ」と誰に向けて言っているわけでもない弱気な思いを吐露したり、一方で「今回の数学には手応え有り」と豪語する強者もいたり。

  「赤点無し!セーフ」もいれば「また90点越えられなかった」と落胆する者もいます。時には三者面談になることも。

  長期休みを前に定期的にはかる自分の力をしっかり受け止めて、弱点克服や実力を鍛える充実した休業期間にしていってほしいものです。

■K太先生
現役教師。教育現場のありのままを伝えるコラム。
 


K太せんせいの本棚J  読書案内

擬人化様々

 寄藤文平著『元素生活』は、ふだんの生活でほとんど意識することのない「元素の世界」を、絵とキャラクターで「見る」本です。本書ではメンデレーエフが周期表をまとめてから約150年、113番の元素「Nh=ニホニウム(2016年に命名)」までを含めた世の中のあらゆる物質を構成する元素の世界が、個性豊かに描かれています。

 たとえば、この「ニホニウム」は亜鉛とビスマスを衝突させること400兆回!9年間掛けてたった3個生み出された日本初の純国産元素で、寿命は何と1000分の2秒という超短命なのです。その姿はおしゃぶりをしたロボット型で描かれていて「生まれたての人工物質」を表現しています。

 

 他にも「何でもできる優等生?!」のマグネシウムや「料理に洗たくママと仲良し」のナトリウムなどもいます。擬人化されることによって物質がもつ性質や働きを、人物の「性格や活躍」として見ることができます。 

  中でも「昔ながらの働きモノ」と紹介されているマンガン(Mn)などは、電池の材料や瀬戸大橋の鋼材でありながら、人の体を必須ミネラルの一つとして支えてくれている、正に縁の下の力持ちのような存在で、日本人としては親近感を覚えてしまいます。

  さて、漫画では石川雅之著『もやしもん』が「菌」の世界を、清水茜著『はたらく細胞』が「細胞」の世界を擬人化して人気を呼んでいます。どちらも目には見えない性格や活躍が描かれており自分の体で今正に起きていることが感じられて、不思議です。見えない存在を見るという意味では、神様や仏様を描いた作品も同じですね。擬人化様々です。

戻る