●医療最前線ドクターリポート181

歯科への上手なかかり方2

日本大学松戸歯学部は歯科学を「口腔科学(Oral Science)」と捉え、医学の一分科としての教育を展開。最前線で活躍する歯科・医科のスペシャリストに、医療現場の現在と未来について連載でリポートしてもらう。

日本大学松戸歯学部 口腔健康科学講座顎口腔機能治療学分野教授
小見山 道  先生

 日本大学松戸歯学部付属病院の「口・顔・頭の痛み外来」は文字どおり口、顔、頭の領域において歯以外に痛みの原因があると考えられる病気を診察する外来です。

  この外来は顎関節・咬合科、口腔外科、麻酔科、脳神経外科、耳鼻咽喉科の連携により、当病院内他診療科、あるいは近隣歯科と医科からの依頼に対応しています。基本的に月曜から土曜まで、まず歯科医師と脳神経外科医師それぞれ一名で対応し、必要がある場合は上記の診療科の歯科医師および医師に依頼しています。継続的に診察が必要な場合そのまま治療にあたります。今回から三回にわたり、この外来で主に拝見している疾患についてお話していきます。

顎関節症

 顎関節とは、耳の穴の約2〜3a前方にある関節で、そこの皮膚に指をあてて口を開けたり閉じたりすれば顎関節が動くのがわかります。顎関節症とは、この顎関節から音がする、顎関節および周辺の筋肉に痛みが出る、あるいはそれらが原因で口が開かなくなるといった症状を有する疾患です。

  20年以上前は顎関節症というと、「咬み合わせが原因なので歯を削ったり、矯正したりしなければいけない」とか「顎関節の雑音はすべて治療しなければいけない」という説もありましたが、近年色々な研究が進んだ結果、顎関節といえども人間の関節の一部であり、整形外科的な対応で経過が良いことが分かってきました。

  皆さん頭や顔の周辺に症状がでると驚かれますが、顎関節症の場合、痛みや機能障害があれば安静にし、必要であれば投薬、落ち着いたらマッサージやストレッチという理学療法を行います。また雑音は経過観察するという保存的な治療でほとんど対応できます(図1・図2)。



(図1)咬む筋肉に痛みがある場合にはマッサージで対応します。


(図2) あごの関節の痛みや筋肉の痛みで口が開かなくなった場合には積極的にストレッチを行います。

  それでも2〜3カ月で症状が取れず、経過が長引けば、顎関節内部の問題に対する外科的処置が必要か、あるいは同じような症状を呈する他の疾患を併発している疑いがありますので詳細な検討が必要です。

  「咬み合わせが原因で顎関節症の症状と共に耳鳴りやめまい等の全身的な症状が起きるのですが」という相談を受けることがありますが、そのような症状を治すために歯を削るといった不可逆的な処置を行うと、症状の変化に関わらず、元の状態に戻すことができなくなりますので治療法については十分相談するようにして下さい。

  当外来は顎関節症の専門家が多数おりますので、顎関節症でお困りの方はぜひ御来院ください。次回は、顎関節症と間違いやすい疾患やあるいはその他の痛みを伴う疾患についてお伝えします。

JR松戸駅とJR南流山駅よりバスがあります。

http://www.mascat.nihon-u.ac.jp/hospital/

■日本大学松戸歯学部庶務課 電話047・360・9567
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